全国書店新聞
             

令和元年7月15日号

日書連通常総会/新会長に矢幡秀治氏/副会長に渡部満、春井宏之両氏を新任

日書連は6月20日、東京・千代田区の書店会館で第31回通常総会を開催。任期満了に伴う役員改選で、3期6年務めて退任した舩坂良雄会長の後任に、東京都書店商業組合理事長の矢幡秀治氏(東京都調布市・真光書店)を選出した。矢幡新会長は1967年生まれの51歳。初代大曾根銈治会長から数えて第10代目の会長となる。就任あいさつで「街の書店と大きな書店が力を合わせて本を売り、紙の本をもう一度再生する。これからの2年間、皆さんとともに頑張りたい」と抱負を語った。
総会は会員総数45名中、本人37名、委任状2名、書面3名の計42名が出席して成立。丸田茂理事(富山)の司会、鈴木喜重副会長(千葉)の開会の辞で始まり、舩坂良雄会長(東京)があいさつに立った。
舩坂会長は在任中の活動を振り返り、「私1人で6年間全うすることは無理だった。皆さんの支えがあったからこそ前に進むことができた」と謝意を表明。しかし、成し遂げられなかったこともあったとして、「書店は売上げを伸ばすため日々努力しているが、出版社はデジタルに力を入れて収益をあげている。出版社は読者が喜ぶ良質な本を出してほしい」と訴え、「次の会長には出版社と友好関係を築きながら、良いことは良い、悪いことは悪いと言い、主張すべき時は主張して、組合活動の大きな流れを作ってほしい」と期待を語った。
議案審議は春井宏之理事(愛知)を議長に進行し、第1号議案の平成30年度事業報告書を各担当委員長が報告し、第2号議案の平成30年度財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金処分案を事務局が説明。小泉忠男(東京)、元永剛(員外)両監事による監査報告、質疑応答の後、いずれも原案通り可決した。
続いて、第3号議案の令和1年度事業計画案を各担当委員長が報告し、第4号議案の令和1年度予算案について事務局が説明。質疑応答の後、いずれも原案通り可決した。
第5号議案の経費の賦課及び徴収方法、第6号議案の令和1年度借入金の最高限度額案、第7号議案の令和1年度役員の報酬額案は政策委員会の舩坂委員長が提案、一括して審議し、いずれも原案通り可決した。借入金の最高限度額は1億円。役員の報酬額は、理事は無報酬、員外監事は60万円。
第8号議案の任期満了に伴う役員改選は、全会一致で選考委員による指名推薦を採用。加賀谷龍二(秋田)、林田芳幸(奈良)両理事を選考委員に理事候補51名、監事候補2名を選出し、これを承認。新役員体制を決定した。任期は2年間。
総会終了後、新役員による第1回理事会を開き、新会長に矢幡秀治氏(東京)を選出。副会長は鈴木喜重(千葉)、藤原直(宮城)、中山寿賀雄(長崎)、面屋龍延(大阪)、柴﨑繁(東京)各氏を再任し、渡部満(東京)、春井宏之(愛知)両氏を新任した。西村俊男(新潟)、本間守世(東京)両副会長は退任した。
委員会は従来通り政策、組織、指導教育、広報、流通改善、取引改善、読書推進、書店再生の8委員会体制で諸施策を推進する。政策は矢幡会長、組織は中山副会長、指導教育は鈴木副会長、広報は面屋副会長、流通改善は藤原副会長、取引改善は柴﨑副会長、読書推進は春井副会長、書店再生は渡部副会長が、それぞれ委員長を務める。
【日書連通常総会の主な報告事項】
〔指導教育〕
鈴木喜重委員長は、粗利30%以上を実現することで書店収益改善を目指す取り組みについて説明した。
「全国小売書店経営実態調査報告書」の分析結果から「書店粗利益の拡大」を主要テーマとして、一昨年秋から昨年春にかけて、舩坂良雄会長、鈴木喜重、面屋龍延両副会長らで主要出版社や取次各社を訪問。書店経営を継続するための基本条件として「粗利益30%以上の実現」を訴え、出版業界3者で課題解決を協議する「書店環境改善実務者会議」の設置を提案した。
実務者会議は、出版社4名、取次3名、日書連から鈴木、面屋両副会長、春井宏之理事、中島良太理事、東京組合・矢幡秀治常務理事の5名が出席。面屋副会長を座長に、昨年4回の会合を開催した。
この中で、出版社は①付録を活用した雑誌増売企画、②新刊書籍を買切販売で返品は歩安入帳、③現在品切れ中の既刊文庫を小ロット印刷して買切・高マージン――を提案。日書連は、書店の立場から粗利30%以上の実現に向けた考えをまとめた「出版業界3者『実務者会議』への試案」を提示した。
この後、実務者会議をいったん休止し、この試案を材料に様々な角度から意見交換するため、舩坂会長、鈴木、面屋両副会長の3名が、今年2月から4月にかけて出版社と取次を再度訪問した。この時、街の書店の経営を維持するための施策や、返品を減らすため現在の制度の見直しを検討する協議会の立ち上げを提案した。
面屋座長は「『試案』全文を全国書店新聞で公表し、今後の議論の叩き台とする。街の書店が生き残るための方策を話し合っていく」との方針を示した。
〔政策〕
舩坂良雄委員長は、与党税制改正大綱で今年10月の消費税率引き上げ時での出版物への消費税軽減税率適用が見送られたことについて「忸怩たる思い」と述べ、日書連をはじめ出版4団体は引き続き軽減税率適用を求める運動を推進すると決意表明した。
万引犯罪防止問題では、出版業界6団体・1企業で構成する万引防止出版対策本部で書店の万引被害の実態把握や二次処分市場との連携に取り組んだほか、地域書店間で顔認証システムを活用して万引被害情報を共有する「渋谷プロジェクト」の実施に向けた話し合いを進めていることを説明した。
〔組織〕
中山寿賀寿雄委員長は、定款変更について報告。「社会的な変化や日書連の役割を踏まえた上で、実情に応じた適切な規定を設けてガバナンス強化のために変更作業に取り組んだ」として、①暴力団等反社会的勢力排除規程の導入、②会社法の改正に伴う見直し、③組織の円滑な運営を促進するための見直し、④運営の実態に適合させるための見直し――を行ったことを説明した。
昨年9月の臨時総会で「定款変更理由書」「定款新旧対照表」が承認され、9月26日に経済産業省商務情報政策局コンテンツ産業課に変更申請、10月29日付で経済産業大臣の認可を受けた。12月13日の定例理事会で新定款の冊子を理事全員に配布し、周知徹底を図った。
平成30年4月1日現在の45都道府県組合の組合加入書店数合計は前年比137店(4・2%)減の3112店だった。この1年間の新規加入は33店、脱退は170店。中山委員長は「組合加入促進は日書連事業活動の重要な柱の1つ。新規店・未加入店の加入促進、脱退による組合員減少に歯止めをかけることに全力を注ぐ」と述べた。
〔流通改善〕
藤原直委員長は、雑誌発売日問題について「出版輸送は急激な運賃高騰やドライバー不足で厳しい状況。土曜休配日が毎年増えているが、輸送問題の深刻化に加え、雑誌売上げの低迷も影響している。動向を注視したい」と述べた。
図書館問題では、全国各地の指定管理者制度の動きに触れ、「指定管理業者は仕方ないとしても、納入業者との区別、納入における地元書店の優先、再販制度の適用を求めていく」と運動の方向性を説明した。
〔取引改善〕
柴﨑繁委員長は、返品現地処理問題について「返品運賃値上げの動きが進む中、経営上の負担を軽減するため、まずは北海道地区での実現を目標に具体的な運営方法の研究を進めている。取次、出版社と話し合い、課題を整理し、実施に向けたロードマップをとりまとめたい」と説明した。
送品・返品同日精算については「重要な問題。完全実施に向けて引き続き取り組んでいく」と述べた。
〔読書推進〕
西村俊男委員長は、平成30年度も「春の書店くじ」「読書週間書店くじ」を発行し、「心にのこる子どもの本新学期・夏休みセール」「同秋・冬セール」増売運動を実施したと報告した。
読書推進運動補助費については、独自企画を提出した青森、山梨、愛知、新潟、富山、大阪、京都、奈良、兵庫の計9組合に総額180万円の補助金を拠出。愛知組合の「サン・ジョルディフェスティバル名古屋」、新潟組合の「にいがた文学検定」、大阪組合の「本の帯創作コンクール」「読書ノート」など、各地で工夫を凝らした企画が実施されたと報告した。
〔広報〕
面屋龍延委員長は、機関紙「全国書店新聞」で日書連の活動と各都道府県組合の動向を組合加入書店に伝えたと報告。「組合員数が減少し、各都道府県組合内における情報交換や意思疎通が困難な状況に直面する中、組合と書店をつなぐパイプとしての機関紙とホームページの役割は重要性を増している」と述べた。
また、隔年開催している「全国広報委員会議」を昨年9月19日、東京・千代田区の文化産業信用組合会議室で開催し、日書連本部広報委員と各都道府県組合広報委員が「広報活動のあり方」をテーマに活発に意見交換を行ったと報告した。
〔書店再生〕
本間守世委員長は、各都道府県組合から報告される再販違反と思われる事例について、出版4団体で構成する出版再販研究委員会にその都度報告して対応を求めていると報告。「消費者の利益を守り、公正な競争を確保するため、今後も努力を続ける必要がある」と述べた。

「春夏秋冬本屋です」/「『選書』というオリジナル商品」/兵庫・井戸書店代表取締役・森忠延

新潮社の『衰退産業でも稼げます』には、「全国で書店の数が減っていますが、大型書店やアマゾンなどのネット書店に品揃えや利便性で負けただけでなく、そもそも書店がオリジナルな商品を販売したり、付加価値がある売り方をしていないのが問題」と、中小書店はバッサリ斬られています。井戸書店でも、私の選書による毎月1冊の頒布販売を2008年から3年ほど行いましたが、PR不足で断念しました。
北海道砂川市・いわた書店の岩田徹さんが始めた1万円選書こそ、オリジナルな価値がプンプンする販売方法だと思います。前掲書にも書かれた、衰退産業の儲けの3つのキーワード、「ビギナーズ・マインド」「増価主義」「地産外商」「地産外招」を岩田さんはまさに体現されています。
「冷やし中華始めました」のノリで実践しなさいという岩田さんのススメで、神戸新聞BOOKクラブ主催で1万円選書の新聞広告を掲載すると、120名強の申し込みがありました。当店からも10名分の選書をさせていただきました。お客様のアンケート結果も好評で、選書そのものがオリジナルな商品であり、販売方法であることは間違いありません。

日書連新会長・副会長の就任あいさつ

〔時代に合った方法を提言/会長・矢幡秀治〕
私は理系。大学院卒業後、日立製作所で半導体を作っていた。妻の実家が真光書店を経営していることもあって、書店に転職した。真光書店に入社して17年が経ち、今は社長を務めている。まったく違う分野だが、もともと人や接客が好きだったので、こういう仕事も面白いと思った。
組合活動では、東京組合青年部で色々な人たちと知り合い、親会の東京組合で本の大切さについて理解を深めた。5月に東京組合理事長に就任し、大きな危機にある出版業界を皆さんとともに改善していきたいと考えているところだ。
そして、本日、日書連会長に就任した。特に活動方針は示さない。さきほど通常総会で事業計画案が承認されたので、まずはその通りにやるべきと考える。そして舩坂前会長がやり残したことを引き継ぐ。時代は1年も経てば大きく変わるので、そうした中、時代に合った方法を選んで皆さんに提言することも私の役割と考えている。出版業界の発展に寄与したい。
人間は昔から紙の本を読んできた。紙の本を読むDNAがあるはずで、本がなくなることはない。良い本は紙の本で残っている。街の書店と大きな書店が力を合わせて本を売り、紙の本をもう一度再生するという気持ちをもって、これからの2年間、皆さんとともに頑張っていきたい。
〔書店のため、出版界のため/副会長・渡部満〕
東京・銀座の教文館に入社して38年ほどになる。古い会社で、出版業と書店業の両建てで長い間やってきた。かつて長く日書連副会長を務めた中村義治社長が亡くなり、その後を継いで社長に就任した。もともと出版部の出だが、この6年間は東京組合の理事に加わり、最近は専ら書店業に精を出している。
前任の本間守世副会長の役を引き継ぎ、書店のため、出版界全体のため、私に出来る限りのことをやっていきたい。
〔「読書推進」と「知の拡散」/副会長・春井宏之〕
愛知・岡崎市で書店をやっている。38万人規模の都市だが、何と言っても名古屋市があるので、その影響を受けながら色々なジレンマを抱えて経営している。
私も矢幡会長と同じく理系で、かつ体育会系。大学を卒業してから11年間、出版社の大日本図書にいた。銀座に会社があったので、渡部副会長の教文館にも何度かお邪魔したことを覚えている。その後、家庭の事情もあって正文館書店に入社し、現在、社長を務めている。
愛知県は「読書推進」と「知の拡散」を合言葉に組合活動を行っている。日書連でも西村俊男副会長の後を引き継ぎ読書推進委員長を務めることになった。色々なことを考えながら形を作っていきたい。

矢幡秀治氏が新会長に就任/出版物小売業公正取引協議会

出版物小売業公正取引協議会は6月20日、東京都千代田区の書店会館で臨時総会を開き、会員42名(委任状含む)が出席。任期満了に伴う役員改選で理事50名、監事2名を選出。臨時総会終了後、新理事による初理事会を開き、新会長に矢幡秀治氏を選出した。
[役員体制]
▽会長=矢幡秀治(東京)
▽副会長=鈴木喜重(千葉)藤原直(宮城)柴﨑繁(東京)
▽専務理事=元永剛(員外)
▽理事=志賀健一(北海道)成田耕造(青森)加賀谷龍二(秋田)玉山哲(岩手)五十嵐太右衞門(山形)西猛(福島)池田和雄(茨城)竹内靖博(群馬)奈良俊一(埼玉)松信裕(神奈川)渡部満(東京)舩坂良雄(同)大塚茂(山梨)吉見光太郎(静岡)春井宏之(愛知)木野村匡(岐阜)別所信啓(三重)西村行人(新潟)丸田茂(富山)森井清城(石川)柳澤輝久(長野)安部悟(福井)吉田徳一郎(滋賀)面屋龍延(大阪)犬石吉洋(京都)林田芳幸(奈良)高市健次(和歌山)中島良太(兵庫)古泉淳夫(鳥取)今井直樹(島根)小野正道(岡山)山本秀明(広島)宮脇範次(香川)平野惣吉(徳島)光永和史(愛媛)五藤栄一郎(高知)安永寛(福岡)森松正一(同)堤洋(佐賀)中山寿賀雄(長崎)長﨑晴作(熊本)二階堂衞司(大分)田中隆次(宮崎)楠田哲久(鹿児島)小橋川篤夫(沖縄)
▽監事=井之上健浩(東京)戸和繁晴(大阪)

日書連信越ブロック会/新会長に丸田茂氏(富山)

日書連北信越ブロック会が6月20日、東京・千代田区の書店会館で開かれ、新会長に丸田茂氏(富山)を選出した。西村俊男会長(新潟)は退任した。

令和1年度日書連新役員

[役員体制]
▽会長=矢幡秀治(東京・真光書店)
▽副会長=鈴木喜重(千葉・ときわ書房)藤原直(宮城・金港堂)中山寿賀雄(長崎・好文堂書店)面屋龍延(大阪・清風堂書店)柴﨑繁(東京・王様書房)渡部満(東京・教文館)春井宏之(愛知・正文館書店)
▽理事=志賀健一(北海道・丸善ジュンク堂書店)成田耕造(青森・成田本店)加賀谷龍二(秋田・加賀谷書店)玉山哲(岩手・東山堂)五十嵐太右衞門(山形・八文字屋)西猛(福島・西沢書店)池田和雄(茨城・一貫堂書店)竹内靖博(群馬・シロキヤ書店)奈良俊一(埼玉・ならいち)松信裕(神奈川・有隣堂)舩坂良雄(東京・大盛堂書店)大塚茂(山梨・柳正堂書店)吉見光太郎(静岡・吉見書店)木野村匡(岐阜・東文堂本店)別所信啓(三重・別所書店)西村行人(新潟・萬松堂)丸田茂(富山・清明堂書店)森井清城(石川・紀陽館森井書店)柳澤輝久(長野・西澤書店)安部悟(福井・安部書店)吉田徳一郎(滋賀・ヨシダ書店)戸和繁晴(大阪・トーワブックス)犬石吉洋(京都・犬石書店)林田芳幸(奈良・啓林堂書店)高市健次(和歌山・帯伊書店)中島良太(兵庫・三和書房)古泉淳夫(鳥取・鳥取今井書店)今井直樹(島根・今井書店)小野正道(岡山・小野書店)山本秀明(広島・金正堂)宮脇範次(香川・宮脇書店)平野惣吉(徳島・平惣)光永和史(愛媛・松山堂書店)五藤栄一郎(高知・冨士書房)安永寛(福岡・金修堂書店)森松正一(同・森松尚文堂)堤洋(佐賀・ブックスグリーンウッド)長﨑晴作(熊本・熊文社)二階堂衞司(大分・二海堂書店)田中隆次(宮崎・田中書店)楠田哲久(鹿児島・楠田書店)小橋川篤夫(沖縄・いしだ文栄堂)石井和之(員外・日書連事務局)
▽監事=小泉忠男(東京・小泉書店)元永剛(員外)
▽顧問=髙島瑞雄(福島・高島書房)
▽相談役=萬田貴久(東京・オリオン書房)丸岡義博(東京・廣文館書店)大橋信夫(東京・東京堂書店)
[各委員長・部会長]
□政策委員会=矢幡秀治会長
□指導教育委員会=鈴木喜重副会長
□流通改善委員会=藤原直副会長
□組織委員会=中山寿賀雄副会長
□広報委員会=面屋龍延副会長
□取引改善委員会・返品現地処理小委員会=柴﨑繁副会長
□書店再生委員会=渡部満副会長
□読書推進委員会=春井宏之副会長
□図書館サポート部会=髙島瑞雄顧問

日書連「試案」を発表/粗利30%以上実現への叩き台に/日書連定例理事会

日書連は6月20日午前、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。
[指導教育委委員会]
鈴木喜重委員長は、「書店環境改善実務者会議」や出版社・取次への訪問など今までの活動について委員会で整理したと説明した。面屋龍延実務者会議座長は、粗利30%以上の実現について書店の立場から考えをまとめた「出版業界3者『実務者会議』への試案」を昨年11月開催の第4回実務者会議に提示したこと、出版社・取次を再訪して「試案」について意見交換し、街の書店の経営を維持するための施策や、返品を減らすため現在の制度の見直しを検討する協議会の立ち上げを提案したことなど、これまでの経緯を説明。理事会で改めて「試案」について意見を求め、全文を全国書店新聞で発表することに承認を得た。
[政策委員会]
出版平和堂顕彰候補者として木野村祐助(岐阜)、村田正喜(千葉)、今西英雄(大阪)の3氏を推薦することを承認した。
「第14回大人の塗り絵コンテスト」(河出書房新社主催)の協力、「絵本ワールドinひょうご2019」(兵庫県書店商業組合主催)と「BOOKEXPO2019」(同実行委員会主催)の後援名義使用をそれぞれ承認。日書連ホームページに、「これから出る本・読後感想文」「同・表紙イラスト」(日本書籍出版協会主催)の募集要項にリンクするバナーを掲載したと報告した。
[読書推進委員会]
西村俊男委員長は「心にのこる子どもの本秋・冬セール」について、日書連ホームページにバナーを載せ、リンク先の日本児童図書出版協会のサイト上でもセールの申込みをしたり、拡材等がダウンロードできる仕組みを作ると説明。セールへの取り組みと「店頭陳列飾り付けコンクール」への参加を呼びかけた。
[組織委員会]
中山寿賀雄委員長が各都道府県組合組合員の加入・脱退状況を報告。4月期は加入2店・脱退18店で16店純減、5月期は加入13店・脱退8店で5店純増となった。宮城組合は未来屋書店が12店加入しており、藤原直理事長は「県の教職員互助会と職員互助会の独自図書券は組合加盟店でのみ利用できるため、お客様からの要望が強かったようだ。図書券利用の条件として、12店全部に加入していただいた」と説明した。
[広報委員会]
10月からの消費税率10%引き上げに伴い、全国書店新聞の年間購読料(税込)を10月1日以降の新規契約と更新分より、現行の7560円から7700円に改訂すると面屋龍延委員長が説明した。

書店を残すための粗利30%以上実現の方策について出版業界3社「実務者会議」への試案/日本書店商業組合連合会

日書連は、「書店を残すための粗利益30%以上実現の方策」をテーマに、出版業界3者で構成する「書店環境改善実務者会議」を昨年4回にわたり開催。今後の議論の叩き台とするため、書店の立場から粗利益30%以上実現に向けた考え方をまとめ、「出版業界3者『実務者会議』への試案」として同会議の第4回会合で提示した。以下に全文掲載する。
Ⅰ、書店の現況
1.書店を巡る厳しい環境
①本だけでは殆どの書店が営業利益を出せない。
②この20年間で売上半減、坪売上も半減、今後も減少が続く。
③固定費(家賃、人件費)削減も限界。
④中小書店は次世代への事業承継に希望を持てず現世代限り。
⑤新規に書店開業できる環境にない(利益薄く在庫を含め初期投資回収が見込めず)。
⑥1.3兆円規模は大企業1社の売上規模レベル(トヨタの純利益の半分)。
⑦取次インフラも2.6兆円、現状設備、新規設備投資も厳しそう。
2.この20年間に書店現場で新たに発生または増加した経費
①書店店頭での商品決済にクレジット使用が大幅に増加、その手数料が3~5%取られる。売上の1~3割に達する。
②客注品取寄せ手数料5%。
③取次と書店間の商品の送品、販売、返品とそれぞれ単品銘柄別在庫管理とPOS利用料を含むデータ使用料が毎月発生している。年間数十万円から数百万円。
④ポイントカードなどの引当て料。
⑤万引きの増加。万引き防止タグの開発導入は進まない。
3.公立図書館の入札と再販制
書店と取次が交わす再販契約書には、公立図書館への図書納入は契約除外になっている。よって地元書店は、地方自治体の競争入札は赤字になるので参加できない。これは価格決定権を持つ出版社なら可能なことである。しかし複数出版社、多品種の書物が発注されるために個々の出版社は対応できない。ここに大きな矛盾があり、専門業者が出版社からバックマージンをとって入札を可能にしている。
4.雑誌の年間定期購読と再販制
3項と同様に本項も再販除外規定となっている。
近年、年間定期購読専門業者が、版元と提携し殆どの雑誌で10%~50%の割引年間定期購読販売を実施している。定価販売を営業基本とする街の本屋はとても太刀打ちできない。
5.電子書籍とdマガジン
コミックと雑誌のリアル市場を大幅に侵食しコミックの紙本は半減し、雑誌も半減まで縮んでいる。
6.NET書店の台頭
アマゾンを始めとするネット書店は、出版市場のおよそ2割以上の占有率を持っている。
Ⅱ、出版業界における出版社の特別な地位
①出版物は基本的に代替性が低いため、取引面で出版社が優位的立場にある。
②価格設定権・拘束権、部数決定権、配本権など、書店の売上、書店経営の基本的要件の全てが出版社に帰属している。
③書店経営は基本的に書店の責任であるが、書店経営の基本要件を握る出版社は業界をどうするか?その責任を負う立場にあるのでは?
④小売一般に比して相応の経営努力をしている書店さえ採算割れに陥り、売場が失われていく業界環境の改革責任が出版社にはあるのでは?
⑤売上半減に伴い、小売拠点半減といった現況を、これまで通り「経済原則」下に委ねておいていいのか?
⑥本と出合いの場を失った子どもたちの知力と未来の学力(国力)は?
しかし出版社も厳しい
①出版社の収益環境も厳しく、一気に書店粗利3割以上への移行は非現実的。
②単品レベルで取組み、雑誌配達の支援といったレベルでの条件見直しを優先的、実験的に導入するが、それだけでは書店経営改善のインパクトなし。
③現在の流通環境下(発売前情報、見本出来を含め)では書店の仕入れ能力は限られ、仕入正味10%下げ、返品正味30%下げの商材は限られる。
④将来的に粗利益30%以上を前提に順次改善を進めるのが現実的。
⑤出版社は書店粗利30%(出版社出し正味60%)を前提とした採算構成へ、経営体制を今後数年かけて順次変更することが求められる(卸し60%を前提とする価格設定。製造・販売コスト等の見直し)。
Ⅲ、業界の原資を生み出す買切制と委託制
①委託制から緩やかな責任販売制への移行は必要だが、一気に買切制あるいはそれに近い制度への移行は困難である。
②書店の仕入れ能力が追いつかず、マーケット縮小のリスクが大きい。
③読者は様々な本と出会える機会が大きく毀損するリスクもある。
④再販制度は弾力的運用の拡大が必要だが、再販撤廃になると中小書店は販売力の大きい企業、ネット書店等に駆逐される。
⑤緩やかに責任販売制へ移行し、時限再販も取り入れた特定単品の準買切制度を併用して、順次利益幅の改善に取り組むことが現実的である。
Ⅳ、実証実験(案)
1.取引正味の変更(概要)
(ア)出荷正味、返品正味の組合せで緩やかな責任販売制を導入。
(イ)販売効率の改善(適正返品率)は出版社の流通コスト、廃棄コスト削減につながることで出荷正味ダウン分のコスト回収(正味下げ原資)。
(ウ)A店(仕入20冊、販売10冊、返品10冊)とB店(仕入12冊、販売10冊、返品2冊)の利益が同じにならない取引条件の導入。さらに一歩進めて、20冊仕入れて10冊販売店より、10冊仕入れて9冊販売店に利益が多い取引条件をつくる。
(エ)仕入れた商品を売り切る努力が高収益に繋がる取引体系。
(オ)返品の少ない外商書店(雑誌配達)、効率販売に注力した書店に収益率が良くなる取引体系。
2.取引正味の変更(運用案)
(ア)入荷正味1%アップ+返品入帳正味2.5%ダウン
(イ)試算:入荷1&#44