全国書店新聞
             

令和3年9月1日号

紙の出版販売額、今年上期は4・2%増/雑誌はコミックスが好調維持/出版科研調べ

出版科学研究所は2021年上半期(1~6月)の書籍・雑誌分野別動向をまとめた。これによると紙の出版物の推定販売金額は6445億円で前年同期比4・2%増となった。内訳は書籍が同4・8%増の3686億円、雑誌が同3・5%増の2759億円。電子出版市場は同24・1%増の2187億円になった。
〔文芸書、ビジネス書などがプラスに/書籍〕
新型コロナウイルス感染症の拡大が前年も今年も続いているため、出版科学研究所は「イレギュラーな状況にあり、単純に前年比で数字の実態を読み解くことが難しい」と指摘する。
書籍の販売金額は3686億円、前年同期比4・8%増。文芸書、ビジネス書、児童書、新書などの主要ジャンルがプラスに推移した一方、前年に学校休校の影響で特需にわいた学参や、既存本にヒットが目立った文庫本はマイナスになった。文芸書は文学賞受賞作を中心にヒットが続出して好調に推移。ビジネス書は会話に関する本や自己啓発書のほか、高価格帯の書籍にもニーズが生まれ前年を上回った。児童書は、前年は学校休校による特需があったが、学習図鑑、学習漫画の大型企画の創刊やロングセラーが堅調でプラスになった。
販売部数は、同2・0%増の2億8611万冊。新刊平均価格は同1・6%増の1238円、出回り平均価格は同3・6%増の1243円だった。金額返品率は30・9%で同1・2ポイント改善した。新刊点数は同2・4%増の3万4853点で、このうち取次仕入窓口経由が同1・2%増の2万3649点、注文扱いが同5・0%増の1万1204点。仕入窓口経由の点数は前年にコロナ禍の影響で大きく減少しており、増加に転じた。
21年上半期のジャンル別動向を見ると、文芸書は前年同期より約10%増と、4年ぶりに前年を上回った。芥川賞受賞の宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社)がジャンル全体を牽引。本屋大賞受賞作の町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)も好調だった。ビジネス書で最も売れたのは、メンタルに軸足を置いた話し方本『人は話し方が9割』(すばる舎)で、6月に70万部を突破。児童書は、「ふしぎ駄菓子屋銭天堂」シリーズ(偕成社)がヒット。小学生に人気が高く、20年9月に放映開始したアニメによってさらにブレイクした。
〔定期誌、ムックは部数の減少が続く/雑誌〕
雑誌の販売金額は2759億円で前年同期比3・5%増となり、19年比でも同0・5%増とプラスで推移した。内訳は、月刊誌が同5・7%増の2331億円、週刊誌が同7・2%減の428億円。月刊誌の内訳は定期誌、ムックがそれぞれ同約2%減、コミックスが同約16%増だった。定期誌やムックは前年に緊急事態宣言下で合併号や刊行延期が多かったが、今年は多くの出版社が通常通り刊行したものの、部数規模の減少が顕著だった。コミックスは前年に引き続き映像化作品が大きく伸長し、好調を維持した。
推定発行部数は同0・7%減。内訳は、月刊誌が同1・3%増、週刊誌が同6・3%減。推定発行金額は同1・5%増で、月刊誌は同2・6%増、週刊誌は同3・4%減だった。平均価格は同2・4%増の598円。定期誌は値上げ傾向が続いている。
金額返品率は同1・1ポイント減の40・5%で、月刊誌が同1・8ポイント減の39・8%、週刊誌が同2・3ポイント増の44・0%。コミックスの好調を受けて全体では改善したが、定期誌のみでは月刊誌、週刊誌とも悪化している。コミックスも巣ごもり需要が一巡した4月以降は上昇傾向にある。
創・復刊点数は同1点増の19点、休刊点数は同8点増の61点だった。『JJ』(光文社)、『ミセス』(文化出版局)などが休刊。『日本カメラ』(日本カメラ社)が休刊し、3大カメラ誌が全て姿を消すことになった。不定期誌の新刊点数は増刊・別冊が同25点減の1441点、ムックは同219点減の3020点。1号を1点とした付録添付誌数は同292点減の4842点。
〔紙+電子の出版販売額は8・6%増〕
電子出版の市場規模は2187億円で前年同期比24・1%増、金額で425億円増加した。内訳は、電子コミック(電子コミック誌含む)が同25・9%増の1903億円、電子書籍が同20・9%増の231億円、電子雑誌が同11・7%減の53億円。
前年に巣ごもり需要で拡大したユーザーが定着し、大幅伸長につながった。また、ストア「DMMブックス」が新規登録者限定で最大100冊まで70%オフになるクーポンを配布した影響が大きかった。コミックはスマホで読む習慣が浸透し、高成長を持続。書籍は「DMMブックス」の施策で高額書が売れるなど初めて2割超の伸びを記録した。雑誌は、定額制読み放題サービス「dマガジン」の会員数減少が続き、2桁減になった。
上半期の紙と電子の市場を合わせると8632億円、同8・6%増。市場全体における電子出版の占有率は25・3%となった。

読書週間標語「最後の頁を閉じた違う私がいた」

読書推進運動協議会(野間省伸会長)の主催により文化の日を挟んで10月27日から11月9日まで実施される第75回読書週間の標語が「最後の頁を閉じた違う私がいた」に決まった。野間読書推進賞、全国優良読書グループ表彰などの行事が行われる。

参考図書

◆『新聞人・出版人2021』(文化通信社刊)
全国紙、県紙、地域紙、広告会社、出版社、書店、取次など、新聞業界・出版業界の主要企業の経営者・幹部220名以上を写真と経歴で紹介。A5判並製160ページ、頒価4950円(税込)。文字・活字メディア業界のコミュニケーションを活性化するために、経歴には出身高校や趣味など他では見られない詳細な内容を盛り込んでいる。関係業界の経営者はもとより現場担当者にも必携の1冊。詳細や購入申込は専用サイトまで(https://www.bunkanews.shop/)。

変化に対応し書店経営の継続図る/岐阜組合総会で木野村理事長

岐阜県書店商業組合は6月30日、岐阜市の岐阜県教販で第38回通常総会を開催し、組合員33名(委任状、書面議決書含む)が出席した。今回も新型コロナウイルス感染防止のため少人数での開催となった。
総会では、富田茂副理事長の開会あいさつに続き、木野村匡理事長があいさつ。昨年から続くコロナ禍やデジタル化の進行等による書店経営の悪化の中にあっても、紙の市場が堅調に推移し、コミックの売上が前年比約3割プラスになったことを指摘して、「消費者の巣ごもり生活は、活字文化の必要性を再認識させた。我々書店人は、デジタル化の進行による変化に引き続き対応しながら書店経営を継続し、読者の獲得と維持につなげたい」と結んだ。
続いて淺野隆男副理事長を議長に議案審議を行い、全ての議案を原案通り承認可決した。
(事務局・大橋麻紀子)

読進協「敬老の日読書のすすめ」推薦図書24点

読書推進運動協議会(読進協、野間省伸会長)は2021年「敬老の日読書のすすめ」のリーフレットを作成した。各都道府県の読進協から寄せられた「敬老の日におすすめする本」の推薦書目をもとに、読進協事業委員会で選定したもの。リーフレットは、各都道府県の読進協や中央図書館を通じて各公共図書館に、取次を通じて全国の書店に配布している。
推薦図書は以下の24点。
▽『老いの福袋』樋口恵子、中央公論新社▽『これでおしまい』篠田桃紅、講談社▽『在宅ひとり死のススメ』上野千鶴子、文藝春秋▽『明るい覚悟』落合恵子、朝日新聞出版▽『料理家村上祥子式78歳のひとり暮らし』村上祥子、集英社▽『80歳、歩いて日本縦断』石川文洋、新日本出版社▽『シニア六法』住田裕子(監修・著)、KADOKAWA▽『老後の年表』横手彰太、かんき出版▽『定年後の作法』林望、筑摩書房▽『老人はAI社会をどう生きるか』平松類、祥伝社▽『スマホ脳』アンデシュ・ハンセン(著)、久山葉子(訳)、新潮社▽『0メートルの旅』岡田悠、ダイヤモンド社▽『希望の一滴』中村哲、西日本新聞社▽『臨床の砦』夏川草介、小学館▽『夫が倒れた!献身プレイが始まった』野田敦子、主婦の友社▽『世間とズレちゃうのはしょうがない』養老孟司/伊集院光、PHP研究所▽『文豪の死に様』門賀美央子、誠文堂新光社▽『渋沢栄一伝』井上潤、ミネルヴァ書房▽『じい散歩』藤野千夜、双葉社▽『おじいちゃんとの最後の旅』ウルフ・スタルク(作)、キティ・クローザー(絵)、菱木晃子(訳)、徳間書店▽『屋根の上のおばあちゃん』藤田芳康、河出書房新社▽『おばあちゃんのたからもの』シモーナ・チラオロ(作)、福本友美子(訳)、光村教育図書▽『おじいちゃんのたびじたく』ソ・ヨン(作)、斎藤真理子(訳)、小峰書店▽『お探し物は図書室まで』青山美智子、ポプラ社

日書連のうごき

7月1日本の日企画説明会に矢幡会長が出席。
7月6日JPIC理事懇談会に矢幡会長が出席。全国書店再生支援財団理事会に髙島、平井両理事が出席。
7月7日JPO運営幹事会(Zoom)に事務局が出席。
7月8日万引防止出版対策本部事務局会議に事務局が出席。JPO運営委員会(Zoom)に事務局が出席。
7月15日書店大商談会実行委員会(Zoom)に矢幡会長が出席。
7月16日子どもの読書推進会議総会に春井副会長が出席。
7月19日出版倫理協議会(Zoom)に渡部副会長が出席。
7月21日読書週間ポスター選定委員会に事務局が出席。
7月26日出版平和堂委員会、平和堂維持会に事務局が出席。
7月27日読進協常務理事会(Zoom)に矢幡会長が出席。
7月28日文化産業信用組合理事会に矢幡会長が書面出席。

「春夏秋冬本屋です」/「大水害の記憶」/奈良・倭の国書房代表・靏井忠義

8月のお盆のころから雨が降り続いた。関西では1週間も続いた。
「残暑厳しく、夏真っ盛りのこの時期に、こんな長雨、記憶にないなあ」などと思いながら店番、雨音を聞いていた。甲子園が降雨ノーゲームや中止になった日でも、奈良の我が店舗付近では陽が差したりする日もあった。被害もなかった。さすがに、最初に都がおかれた地――。
そんな奈良でも、歴史を振り返ってみると、大雨による大水害はたくさんあった。日本一広い村である県南部の十津川村では、明治22年の十津川大水害で死者249名を数え、多くの人が北海道へ集団移住した。昭和34年の伊勢湾台風では吉野地方で死者88名、不明者25名。平成23年の台風による長雨では、十津川村などで死者14名、不明者10人が出る被害があったことも記憶に新しい。
遺跡の発掘調査でも、大洪水被害の跡が発見されている。奈良盆地内から土石流で一気に埋め尽くされた1万平方㍍に及ぶ弥生時代の水田遺構が出土した。土石流は厚さ1メートル程も堆積していた。およそ2400年程前にも凄まじい洪水があったことを示す遺跡だった。
洪水の跡でなくとも、奈良盆地の古代の遺構はたいがい、1メートル以上の地下深くから出土する。平穏だった年でも、雨水によって砂や泥が運ばれるからという。年間1ミリ堆積しても1000年経てば1㍍になるのだそうだ。
改めて、雨と水の怖さを思う。

最低賃金引上げで県中央会に要望書提出へ/神奈川理事会

神奈川県書店商業組合(松信裕理事長)は7月27日、横浜市中区の横浜市健康福祉総合センターで定例理事会を開催した。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、可能な限り書面議決書での参加による縮小開催とした。
議事では、厚生労働省の審議会が今年度の最低賃金を全ての都道府県で28円引き上げることを決めたことについて、コロナ禍で多くの書店の経営が厳しく、廃業に追い込まれる書店も相次いでいる現状を訴えるため、県中小企業団体中央会に要望書を提出することを決めた。
また、8月24日開催の総会に向け、令和2年度決算報告書や令和3年度収支予算案などを審議し、理事会として承認した。総会はコロナ禍の状況を鑑み書面議決書での参加を呼びかけ、実出席は少人数で開催することとした。
(山本雅之広報委員)

雑誌発売日の改善求める/非組合書店の加入を促進/長崎総会

長崎県書店商業組合(中山寿賀雄理事長)は7月27日、諫早市の水月楼で第34期通常総会を開催し、組合員22名(委任状含む)が出席した。
総会は草野義広専務理事の進行で始まり、中山理事長があいさつ。出版業界を巡る状況に言及し、廃業に伴う組合員数の減少や、2年目になるコロナ渦の影響などについて説明した。
その後、古瀬寛二副理事長を議長に選任して議案審議を行い、全ての議案を原案通り承認した。
1号議案の事業報告は中山理事長が行い、出版業界の現状や日書連の事業概要等について説明。2号議案の決算報告は草野専務理事が説明し、中山理事長が監査の結果適正であったと報告した。
3号議案の令和3年事業計画案について中山理事長は、九州一円の雑誌発売日を3日目地区に戻すよう要望すること、非組合書店の加入促進、県立図書館のイベント等に積極的に協賛すること――を説明。4号議案の収支予算案とともに承認された。
総会終了後、来賓の長崎県中小企業団体中央会・若杉氏とテジマ運送・鶴田氏があいさつ。鶴田氏からは、運送業務(働き方改革等)の厳しい状況について説明が行われた。
(古瀬寛二広報委員)

6月期販売額は0・4%減/書籍、雑誌とも返品が増加/出版科研調べ

出版科学研究所調べの6月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比0・4%減となった。
内訳は書籍が同0・2%増、雑誌が同0・9%減。書籍は推定出回り金額が同2・5%増と送品は多かったが、先月に続き返品が前年を上回り、販売金額は微増にとどまった。雑誌の内訳は月刊誌が同3・1%増、週刊誌が同20・0%減。月刊誌は前年の5~6月にかけて刊行延期や合併号扱いが多く、刊行本数が少なかったため、推定発行金額が同8・0%増と大幅に増加。同時に返品も増えたが、返品増でプラスとなった。週刊誌の激減は、期ズレで刊行本数が少なく、また返品が前年同月比で非常に多かったため。
書店店頭の売上げは、前年同月が巣ごもり需要で伸びていたこともあり低調だった。書籍は約9%減。主要ジャンルはいずれもマイナスとなったが、その中で児童書は約1%減にとどまった。人気絵本シリーズの新刊『もりの100かいだてのいえ』や読み物「ふしぎ駄菓子屋銭天堂」シリーズ、5月23日に逝去したエリック・カールの既刊絵本など、偕成社の書籍に勢いがあった。
雑誌の売上げは、定期誌が約1%減、ムックが約1%減。コミックスは前年並み。『進撃の巨人』(講談社)の最終巻(34巻)や初版200万部で刊行された『呪術廻戦』(集英社)の16巻、『ONEPIECE』(集英社)の99巻など、ビッグタイトルの新刊が相次いだが、前年の『鬼滅の刃』(集英社)の勢いが凄まじく、プラスとはならなかった。

日本漫画家協会賞大賞は「鬼滅の刃」

第50回日本漫画家協会賞の受賞作品が7月26日に発表され、コミック部門は吾峠呼世晴「鬼滅の刃」(集英社)、カーツーン部門はジョルジュ・ピロシキ「NEWNORMAL」(自費出版)が大賞に輝いた。
「鬼滅の刃」は「マンガはここまで多くの人の心を動かせるということを示してくれた熱気溢れる感動作に敬意を表したい」、「NEWNORMAL」は「毎回若い感覚のトボけた絵やアイデアで笑わせてもらっています」が受賞理由。
このほか、まんが王国とっとり賞に小梅けいと「戦争は女の顔をしていない」(KADOKAWA)、まんが王国・土佐賞に「EYEMASK」(蒼天社)が選ばれた。
この賞は日本漫画家協会が72年より設けている。選考委員長を里中満智子、選考委員をいご昭二、ウノ・カマキリ、小田切博、幸森軍也、辻下浩二、萩尾望都、三浦みつる、森川ジョージの各氏が務めた。
なお、贈賞式は10月1日、帝国ホテルで開催予定。

21年上半期コミック第1巻売上ランキング/『ウマ娘シンデレラグレイ』が1位/日販「ほんのひきだし」が発表

日本出版販売(日販)が運営するウェブメディア「ほんのひきだし」は7月30日、2021年上半期(1月~6月)の「コミックス第1巻売上ランキング」を発表。第1位は「ウマ娘シンデレラグレイ」(漫画・久住太陽、原作・Cygames、脚本・杉浦理史、漫画企画構成・伊藤隼之介/集英社)だった。
「ウマ娘~」は、スマートフォン向けゲーム「ウマ娘プリティーダービー」を元にした漫画。オグリキャップやシンボリルドルフなど実在した過去の名馬たちが擬人化され、かつての名勝負や伝説のレースとリンクするストーリーとなっている。
「ほんのひきだし」では、「新しい漫画と出合うきっかけを作る」ことを目的に、コミックス第1巻の売上ランキングを半期ごとに調査・集計し、発表している。このランキングは、集計期間中に第1巻が発売された「まだ若い作品」を、期間中の第1巻の売上のみで集計したもの。
2位以下は次の通り。
②「DEATHNOTE短編集」(漫画・小畑健、原作・大場つぐみ/集英社)③「黙示録の四騎士」(鈴木央/講談社)④「戦隊大失格」(春場ねぎ/講談社)⑤「図書館戦争LOVE&WAR番外編」(漫画・弓きいろ、原作・有川ひろ/白泉社)⑥「RAIDEN‐18」(荒川弘/小学館)⑦「め組の大吾救国のオレンジ」(著・曽田正人/講談社)⑧「九条の大罪」(真鍋昌平/小学館)⑨「サクラ、サク。」(咲坂伊緒/集英社)⑩「月曜日のたわわ」(比村奇石/講談社)

子どもの頃の読書量が多い人/行動力・理解力など高い傾向/青少年機構が調査

国立青少年教育振興機構は8月11日、「子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究」の結果を公表。小学校高学年から高校までの読書量が多い人は、大人になった時に意識・非認知能力(自己理解力、批判的思考力、主体的行動力)や認知機能(文章理解力、語彙力)などの能力が高い傾向にあることが分かった。
全国の20~60代の男女5000名を対象に2019年2月中旬にインターネット調査を実施し、子どもの頃の読書量により①小中高を通して読書量が少ない、②小中高で読書量が低下している、③小中高で緩やかに読書量が上昇している、④小中高を通して読書量が多い――の4グループに分けて、子どもの頃の読書活動と各種能力との関連について多面的に検証した。
これによると、読書量が多いグループは、読書量が少ないグループに比べて自己理解力(自己肯定感)が2・04点、批判的思考力(客観的、多面的、論理的に考える力)が2・42点、主体的行動力(何事にも進んで取り組む姿勢や意欲)が2・22点、それぞれ上回っている。
また、興味・関心に合わせた読書量が多い人ほど、小中高を通した読書量が多い傾向にあることが明らかになった。どのような読書活動を経験したか質問したところ、「本を持ち歩いて読んだ」「地域の図書館で本を借りた」「ジャンルを問わず読んだ」「同じ本を繰り返し読んだ」「目次、前書き、解説など本文以外の部分も読んだ」「図書委員、子ども読書、読書コンシェルジュの活動をした」「絵本を読んだ」――の7つの経験をしたという回答が多かった。
一方、「1日に読むページを決めて読んだ」「著者がどのような人か理解してから読んだ」「学校や市の推薦図書を選んだ」といった経験を多くすることは、小中高を通した読書量の少なさと関連していた。これらは、自由な読書をかえって妨げてしまう可能性もあると考えられる。
今回の調査では、本(紙媒体)、スマートフォン、タブレット、パソコンなどの読書のツールに関係なく、読書している人はしていない人よりも意識・非認知能力(自己理解力、批判的思考力、主体的行動力)に高い傾向が見られたが、特に本(紙媒体)で読書している人は最も高い傾向にあることが示された。
調査結果をまとめて、同機構は「小中高を通して読書活動することは意識・非認知能力、認知機能を高める可能性があることが示された。そして、小中高の読書量の多さには、子どもの頃の自律的な読書経験が関連しうることが示された。この結果から今後の読書活動の推進を考えた場合、引き続き紙媒体による読書の推進に力を注ぎつつ、スマートデバイスの個人所有率の高さを踏まえ、すでに行われている様々な電子メディアを介した読書活動の推進が効果的と考えられる。その際、年代により読書活動の実態は異なるため、各年代に合わせたアプローチが必要であり、今後詳細に検討することが望まれる。また、小中高と読書活動を継続するためには、小学校高学年において、家庭や学校で本調査研究で得られたような読書活動の経験ができるように取り組んでいく必要がある」としている。

『スマホ脳』(新潮新書)、50万部を突破

新潮社は8月24日、アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)が発売9ヵ月で16刷52万部に達し、50万部を突破したと発表した。電子書籍も4万部を超えている。
同書は、スマホなどデジタル機器が人間の脳にどのような影響を与えるかを膨大な研究結果をもとにわかりやすく分析した、世界的ベストセラー。日本でも今年上半期のベストセラーランキングでオリコンとトーハン、日販の新書部門で1位となった。

トーハン、YouTubeチャンネル「出版区‐SHUPPUNK‐」を開設

トーハンは、本や出版業界の魅力を伝えるYouTubeチャンネル「出版区‐SHUPPUNK‐」を開設し、8月2日より動画配信を開始した。
同社は中期経営計画「REBORN」における「事業領域の拡大」の一環として、2020年に社内プロジェクト「エンタメ・スタートアップ・ラボ」を設置しているが、今回のYouTubeチャンネルはこのラボに所属する平均年齢28・3歳の若手社員を中心に開設した。動画の企画から出演・撮影・編集まですべて社員が行う。配信は毎週月・金曜日の週2回。
タイトル「出版区」は出版+PUNKの造語。PUNKの精神で忖度抜きのリアルな出版エンタメコンテンツを配信する。本の楽しさ、書店の面白さを発信すると同時に、YouTubeをプラットフォームとした新しい出版ビジネスの形も模索するという。

TikTok、出版社5社とコラボ/日販が文庫フェアを実施

日本出版販売(日販)は8月23日~10月11日、TikTok、出版社5社とのコラボレーション企画「TikTok『#本の紹介』文庫フェア」を取引書店約600店で実施している。
書店店頭ではTikTokで紹介された作品が注目を集め、一般ユーザーの投稿をきっかけに売上げを伸ばし、増刷や映像化につながる作品が相次いでいる。1月、一部の取引書店でTikTokで話題の文庫作品をフェア展開したところ、購入者に占める10代の割合がフェア実施前と比べ2倍以上になり、10代を中心に訴求効果があることが分かった。
日販はこうしたニーズを受けて新しい取り組みを開始。今回の企画は「本を読みたいけど何を読めばいいかわからない」という人たちに向けて、出版社5社が選ぶ「10代が夏に読むべき作品」を、各社のTikTok公式アカウントから紹介。紹介された動画はTikTokの特設ページ『#本の紹介』で公開される。
これに合わせて、全国の書店約600店で「TikTok『#本の紹介』文庫フェア」を展開。TikTok上でフェア展開中の書店を紹介するなど、TikTokユーザーが書店へ足を運びやすい仕掛けを実施する。
出版社5社が選ぶ「10代が夏に読むべき作品」は次の通り。
▽集英社=長谷川夕『僕は君を殺せない』、持地佑季子『クジラは歌をうたう』▽小学館=砂川雨路『置き去りのふたり』、櫻いいよ『図書室の神様たち』▽スターツ出版=汐見夏衛『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』、冬野夜空『一瞬を生きる君を、僕は永遠に忘れない。』▽文芸社=吉川結衣『あかね色の空に夢をみる』、新馬場新『月曜日が、死んだ。』▽ポプラ社=顎木あくみ『宮廷のまじない師』、優衣羽『僕と君の365日』

7月期は前年比5・9%減/コミックが2ケタ減の落ち込み/日販調査店頭売上

日本出版販売調べの7月期店頭売上は前年比5・9%減。前年はコロナの影響で夏休みが8月にずれ込んだ地域が多く、例年7月に売れるものが8月に売れた影響で、学参と児童書が売上げを伸ばした。コミックは好調なタイトルがあったものの、2ケタ減と落ち込んだ。
雑誌は4・2%減。月刊誌はDEAN&DELUCAのレジかご買物バッグ+ストラップ付き保冷ボトルケースを付録に付けた「GLOW8月号」(宝島社)、週刊誌は「ザテレビジョン増刊東京2020オリンピックテレビ&配信オフィシャル観戦ブック」(KADOKAWA)が売上げを伸ばしたが、雑誌全体はカバーできなかった。。
書籍は2・7%減。学参と児童書が2ケタ増となったが、7ジャンルで前年割れとなり、書籍全体でプラスとはならなかった。学参は『くもんの夏休みドリル小学1年生』(くもん出版)、児童書は『小学館の図鑑NEO深海生物DVD付き』(小学館)や第67回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書が売上げを伸ばした。
コミックは11・9%減。「東京卍リベンジャーズ」(和久井健、講談社)の新刊・既刊が売上げを伸ばしたが、前年に「鬼滅の刃21」(吾峠呼世晴、集英社)通常版・特装版が好調
だった反動で、前年を下回った。雑誌扱いコミックは「キングダム62」(原泰久、集英社)、書籍扱いコミックは『ホリミヤ画集「卒アル」』(HERO、スクウェア・エニックス)が売上げを牽引した。

トーハン『書店経営の実態』の発行休止

トーハンは7月28日、今年度以降『書店経営の実態』の発行を休止すると発表した。
調査協力店のデータを元に書店の経営指標をまとめた資料で、1973年の発刊以来毎年改訂を続けてきたが、コロナ禍で書店の経営環境が大きく変化していることに加え、継続的な書店数の減少と業態の多様化により定量的に分析可能なデータ収集が難しくなり、経営の参考資料としての利用に堪える適切な指標の算出が難しくなった。

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・齋藤一郎

市野さおり著『肩こり・不眠・美顔に効く!1分「耳ストレッチ」』(青春新書 1000円)は、1分で全身の不調を楽にするという耳のツボを紹介する。
耳には100以上のツボがあって、WHO(世界保健機構)が耳介治療に認定したツボでも43箇所ある。たとえばマスク生活で耳の痛い人が増えているが、ゴムの圧迫というより、その前に耳自体のコリが原因のことが多い。耳の上側が痛いのは首コリ、頭痛、イライラ、目の疲れも疑ってみる。
耳を刺激するにはまず柔らかく触れ、1分以上続けないのがベスト。基本のストレッチから頭痛、ドライアイ、めまい、腰痛、五十肩、夏バテ、便秘、下痢、血圧など、症状別に2色のイラスで解説する。アレルギー症状には、耳尖という耳の一番上のポイントを強めにつまむところから始める。耳たぶも肩こりのツボが多く、美容ではほうれい線ケア、顔のリフトアップも耳たぶの少し上がポイントである。帯津良一/藤井直樹著『病気にならない全身のツボ大地図帳』(三笠文庫648円)は百会という頭のてっぺんのツボから、全身170ヶ所を紹介するロングセラー。口から息をゆっくり吐きながら押し、鼻で吸いながら力を抜くのがコツ。