全国書店新聞
             

令和6年2月15日号

6.0%減の1兆612億円/2023年「紙の出版物販売額」

出版科学研究所は「季刊出版指標」2024年冬号で、2023年の出版物発行・販売概況を発表した。紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比6・0%減の1兆612億円だった。内訳は、書籍が同4・7%減の6194億円、雑誌が同7・9%減の4418億円。電子は同6・7%増の5351億円。紙+電子の出版市場は同2・1%減の1兆5963億円で2年連続の前年割れとなった。24年の紙の出版市場は、23年と同程度減少すると1兆円を割り込むことになる。

[書籍4.7%減、雑誌7.9%減]
【書籍】書籍の推定販売金額は前年比4・7%減の6194億円。年間を通した物価高と新型コロナの行動制限解除の影響を大きく受けた。上半期は大きく落ち込んだが下半期はやや持ち直し、ジャンル別で文芸書、学参、ビジネス書の売れ行きが戻り始めるなど明るい兆しも見えた。
推定販売部数は同6・7%減の4億6405万冊。98年の7・1%減に次ぐ減少幅となった。
新刊点数は同3・0%(1980点)減の6万4905点と、3年連続の減少となった。内訳は取次仕入窓口経由が同1・1%(538点)減の4万6642点、注文扱いが同7・3%(1442点)減の1万8263点。取次仕入窓口経由の新刊は11年連続で減少した。
新刊推定発行部数は同4・4%減の2億5777万冊。電子版のリリースや小ロットでの増刷、スピード化もあり、企画を厳選し部数もメリハリをつけ無駄を省くのが当たり前になっている。1点当たりの発行部数は前年並みの4000冊。
平均価格は、新刊が同2・9%増(37円高)の1305円と、ついに1300円を超えた。年前半は顕著な上昇を示したが、年後半は徐々に落ち着いていった。出回り平均価格は同2・3%増(29円高)の1285円。
金額返品率は同0・8ポイント増の33・4%。年前半の悪化が深刻だったが、7~9月期は0・4ポイント、10~12月期は0・2ポイント改善し、年間ではわずかな悪化にとどまった。
【雑誌】雑誌の推定販売金額は同7・9%減の4418億円。内訳は、月刊誌が同7・2%減の3728億円、週刊誌が同11・3%減の690億円。月刊誌の内訳は、定期誌が約5%減、ムックが約7%減、コミックス(単行本)が約10%減。
推定販売部数は同13・0%減の6億7000万冊。内訳は、月刊誌が同12・1%減の5億527万冊、週刊誌が同15・8%減の1億6560万冊。
定期誌はほとんどの部門の発行部数が1割近いマイナス。部数を伸ばす雑誌は少なく、創刊誌はほとんどが分冊百科で、プラスとなる要素が少ない。刊行ペースを落とすだけでなく、合併号にして年間の刊行本数を減らす動きも目立つ。出版社は紙媒体だけにとどまらない雑誌ブランドを活かしたビジネスにシフトしつつある。
平均価格は同5・4%増(34円高)の661円。81年以来の5%台となる大幅な上昇を記録した。内訳は、月刊誌が同5・5%増(39円高)の743円、週刊誌が同5・4%増(22円高)の429円。
金額返品率は同1・3ポイント増の42・5%。内訳は、月刊誌が同0・9ポイント増の41・5%、週刊誌が同3・4ポイント増の47・3%。週刊誌の急激な悪化が顕著に見られた。
創復刊点数は同14点減の25点。史上最低を記録した21年の33点を下回った。休刊点数は同30点大幅減の65点。「みすず」「Player」「Popteen」「週刊ザテレビジョン」「週刊朝日」など歴史ある雑誌の休刊が目立った。

[電子出版6.7%増/市場シェア33.5%に拡大]
【電子】電子出版市場は同6・7%増の5351億円。内訳は、電子コミック(コミック誌含む)が同7・8%増の4830億円、電子書籍が同1・3%減の440億円、電子雑誌が同8・0%減の81億円。紙市場に逆風が続く中、電子市場は引き続き高い成長率を示した。電子出版での占有率は、電子コミックが90・3%、電子書籍が8・2%、電子雑誌が1・5%。
電子コミックは各ストアの広告出稿や活発な施策で堅調を維持し、市場を牽引している。縦スクロールコミックも依然好調で、全体の数字を押し上げている。
電子書籍は22年に初めて微減となったが、23年はさらに数字を落とし2年連続で減少した。ライトノベルや写真集は比較的好調だが、文芸やビジネス、実用書などは不振だった。
電子雑誌は、減少幅はやや緩やかになったが、NTTドコモの定額制読み放題サービス「dマガジン」の会員減少が続いている。
紙+電子の出版市場は同2・1%減の1兆5963億円で2年連続のマイナス。市場全体における電子の占有率は33・5%で同2・8ポイント上昇した。

「能登半島地震」被災書店義援金受付/石川県書店商業組合

◇義援金の振込先
北國銀行大桑橋支店
普通預金0046491
口座名義石川県書店商業組合能登半島地震義援金

北海道新年合同懇親会/PubteXのRFID事業に期待/志賀理事長「普及すれば流通革命」

北海道書店商業組合は1月23日、札幌市中央区のJRタワーホテル日航札幌で北海道取協・出版社・書店組合新年合同懇親会を開催し、計31名が出席した。
初めに主催者を代表して北海道組合の志賀健一理事長があいさつ。「物価が上昇し本の値段も上がっているが、売上は芳しくない。そんな中でも書店員は真剣に本と向き合い、1人でも多くのお客様にお買い上げいただくべく努力しているので、評価していただきたい」と理解を求めた。
出版業界の動きでは、「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」(書店議連)と、講談社、小学館、集英社と丸紅グループが設立した合弁会社PubteXに言及。書店議連については「骨太の方針に書店支援の文言が盛り込まれ、国会議員も書店の大変さを分かってくれたのかなと思う」、PubteXがコミックスなどへのRFIDタグ挿入を本格化させていることについては「普及すれば大変な流通革命になる。書店店頭での使い勝手も期待できる」と話した。
そして「厳しい流れはなかなか落ち着かないと思うが、作家も書店を大切にしなければいけないと言い始めており、味方はどんどん増えていると実感している。皆さんの力を結集して、よりよい環境を構築できるよう努力したい」と抱負を述べた。
続いて静山社ホールディングスの吉川廣通社長、日本出版販売北海道支店の木梨佳典支店長があいさつし、亜璃西社の和田由美社長の発声で乾杯。懇親を深め、今年の活躍を誓い合った。
(事務局・髙橋牧子)

ガタロー☆マンのイラストで読書推進/オリジナルポスターを店頭掲示/東京など全国66書店で

東京都書店商業組合(矢幡秀治理事長)は、読書推進を目指した取り組みとして、2月上旬より東京42店舗をはじめ全国66店舗で、ガタロー☆マンの「本を読めーッ!!!バカになるぞーッ!!!」というメッセージを込めたオリジナルポスターを掲示している。同イラストのオリジナルクリアファイルも配布中。
同組合は「この機会にぜひ近くの書店に立ち寄ってほしい」と呼びかけている。
ガタロー☆マンは絵本作家。笑本(えほん)おかしばなしシリーズ『ももたろう』(誠文堂新光社)でデビューし、第14回MOE絵本屋さん大賞2021新人賞1位受賞。『おおきなかぶ~』『てぶ~くろ』(同)を含めたシリーズ3部作が累計28万部突破の大ヒット。待望の新作『おだんごとん』(マガジンハウス)が昨年11月発売。ギャグマンガの鬼才「漫☆画太郎」という別名の漫画家でもある。

日書連のうごき

1月9日 日本出版クラブ出版関係新年名刺交換会に矢幡会長が出席。
1月10日 創価学会、聖教新聞社訪問に矢幡会長、平井副会長、小川理事が出席。書店新風会の新風賞贈賞式・新年懇親会に矢幡会長が出席。
1月11日 第73回日教販春季展示大市会に矢幡会長が出席。
1月12日 悠々会新年会に矢幡会長が出席。
1月16日 公取委委員長講演会、賀詞交歓会に事務局が出席。
1月18日 日本出版インフラセンター(JPO)運営委員会(オンライン)に平井副会長が出席。
1月19日 公取委ヒアリングに矢幡会長、平井副会長が出席。出版倫理協議会新年会に平井副会長が出席。
1月23日 読書推進運動協議会常務理事会に矢幡会長が出席。
1月24日 文化産業信用組合理事会に矢幡会長が出席。総務財務ワーキンググループ会合に矢幡会長、春井副会長、深田副会長が出席。読書推進活動補助費審査会に矢幡会長、春井副会長、深田副会長が出席。
1月30日 池田大作氏お別れの会に矢幡会長が出席。出版ゾーニング委員会に事務局が出席。日本図書普及取締役会に矢幡会長、藤原副会長、春井副会長が出席。
1月31日 JPO運営幹事会に事務局が出席。

連載「春夏秋冬 本屋です」~バトン引き継ぐ~/中野道太(静岡・焼津谷島屋・専務取締役)

今回で自分の担当するコラムが終了する。コラムを書くことになったご縁と機会に感謝する。
実は20年ほど前になるが、数年ほど某取次会社に勤務させていただいた。業界のことをそこで学ぶ機会を経て今の自分がある。当時からお世話になった諸先輩方、取引先書店様、版元様の中には今現在も懇意にさせていただいている方もいる。旧知の仲であった方々からもコラムを読んだとご連絡いただいていた。ご連絡いただいた皆様にもこの場を借りて感謝申し上げる。しかしこの20年間に、多くの元同僚や知人もこの業界を離れた。親交のあった書店でも閉店や廃業を選択されたところも多い。弊社も2年前に体制を変える機会をいただいたことで現在がある。
体制を立て直す準備をしていた時に改めて知ったことだが、自分が書店業界に関わることになったのは故人である祖父の兄が現在の取次会社の前進である日本出版配給に戦後の時代に働いていたことに基因していた。
特に大伯父とはっきりとした面識があるわけでもなく、何かの想い出があるわけでもないが、様々な時代を経て現在、地域の方々へ本を届けるバトンが自分のところに来た。時代も大きく変わり業界の体制も大きく変わった。自社の体制も変化したが、「本を読者に届ける」――その想いのバトンは可能な限り引き継いでいく。

「春の読者還元祭2024」実施要項

▽名称 日書連主催「春の読者還元祭2024」
▽期間 2024年4月22日(月)より5月13日(月)まで受付(22日間)
▽対象書店 組合加盟書店及び希望する書店
▽実施方法 期間中に来店したお客様、外商先などにキャンペーンサイトを案内。参加にはお客様自身による専用サイトへの応募が必要
▽販促物 ①「キャンペーンしおり」(1種類
500枚。応募はしおり1枚につき一度のみ有効。図案は名画を予定)②店頭用A3ポスター1枚を1組3630円(税込)で頒布。書籍、雑誌を購入したお客様(税込500円を目安)に進呈。店頭用A3ポスターは告知用。日書連ホームページからもダウンロード可能(今回はQRコード付き応募ポスターの作成はなし)
▽申込方法 自主申込制。注文書(2月郵送予定)に申込数と実施書店名を記入の上、所属の都道府県組合宛に申し込む。申込締切は2月28日(水)。締切厳守のこと。
▽納品と請求方法 取引取次店経由で4月中旬に納品。代金は取引取次店から請求
▽賞品 総額300万円
 ・図書カードネットギフト1万円  100本
 ・同3千円            200本
 ・同1千円           1400本
 抽選方法は結果がその場でわかる「スピードくじ」を採用。当選者には日本図書普及株式会社より直接、図書カードネットギフトメールを5月中旬以降随時送信する予定
▽報奨金 「しおり」を有料購入して応募者を150件以上集めた組合加盟書店に報奨金2860円(税込)を支給。支給金額は「しおり」購入数に関わらず2860円(税込)とする
▽その他 販促活動への助成として、組合加盟全店に「しおり」20枚を無料進呈。キャンペーン開始までに全店に直送

京都組合・滋賀組合合同主催/森見登美彦さんトークイベント、特別ゲスト宮島未奈さんも加わる/ファン200人集まる

京都府書店商業組合(犬石吉洋理事長)と滋賀県書店商業組合(平井浩理事長)の合同主催による、森見登美彦『シャーロック・ホームズの凱旋』(中央公論新社)刊行記念トークイベントが2月3日、京都市下京区のキャンパスプラザ京都で開催された。同作品と、ほぼ同時に発売された宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』(新潮社)を書店組合加盟書店で購入し、イベント参加費1000円を支払ってチケットを購入した読者が参加した。
森見さんは、2014年の第2回京都本大賞受賞者で、京都を舞台にした人気作品が多い。今回の作品は1月に発売したばかりにも関わらず、先着200名の枠は即完売となった。イベント告知は書籍発売の約1ヵ月前からSNSや組合加盟書店の店頭で行った。
参加したファン層は老若男女幅広く、東京をはじめ遠方から駆け付けたファンも多数見られた。洞本昌哉実行委員長(ふたば書房)は「作家を招いたイベントを有料で合同実施するのは日本で初めての試みになるのでは」とコメントした。
第1部は森見さんと洞本実行委員長によるトークショーを行い、貴重な制作秘話などファンにとってかけがえのない時間となった。
第2部は特別ゲストの宮島さんも交えたトークイベントに移行。森見さんと宮島さんはかねてよりお互いの作品をリスペクトしており、滋賀県を舞台にした宮島氏の人気シリーズ最新作が刊行されるのに際し、滋賀組合との合同イベントとして初の対面が実現した。
参加者には特典として森見さんのサイン入り特別ブックカバーと宮島さんのサイン入り栞が配られ、和気あいあいとした雰囲気で進行。出口でお見送りして閉会した。
トークイベントは以前から何度か開催しているが、今回有料でも集客できたという実績は非常に大きい。参加者から「好きな作家の貴重な話を聞けるならいくらでも払いたい」という意見があり、それに賛同する人たちから拍手喝采が起きたのも素晴らしかった。
全国的にこのような動きが広がっていけば業界にとっても非常に良いので、京都組合までお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
(若林久嗣広報委員)

「BOOKMEETSNEXT」公式YouTubeチャンネル開設

出版文化産業振興財団(JPIC)はこのほど、公式YouTubeチャンネル「BOOKMEETSNEXT『街に本屋があるということ』」を開設した。昨年11月の京都ブックサミットの様子や、著名ゲストが本との出会いや心に残る1冊を語る撮りおろしインタビューなどの動画を随時公開する。
第1弾として、元WBA世界ミドル級チャンピオンでロンドン五輪金メダリストの村田諒太さんや声優の山根綺さんのオリジナルインタビュー、京都ブックサミットでの角田光代さんと山本淳子さんの対談をアップした。
なお、「街に本屋があるということ」は東京都書店商業組合の公式YouTubeチャンネルと同じサブタイトル。多くの皆さんに本屋さんへ足を運んでいただくため、相互送客を目指しているという。
今後も全国の本屋さんを応援するメッセージを込めた動画をアップしていくとしている。

日山会が「50+α周年」記念会/日販・奥村社長、講談社・峰岸常務ら祝福

日本出版販売(日販)取引書店の会「日山会」は1月26日、東京・文京区の東京ガーデンパレスで「新年会&50+α周年記念会」を開催し、会員書店、出版社、日販関係者など計40名が参加した。
開会あいさつで小泉忠男会長(小泉書店)は「日山会は大阪万博の1970年頃、書店有志と日販担当者が情報交換と販売促進を目指して集い、以来50余年の歴史を重ねた会。自然発生的に誕生したため正確な発足日の記憶はなく、このような名の周年記念会になった」と説明した。
来賓の日販・奥村景二社長は能登半島地震の被災者にお見舞いの言葉を述べ、「コンビニ配送を25年2月をめどに終了する。取引先書店へ効率的な物流を図り、支援する」とあいさつした。
講談社・峰岸延也常務は「アメリカでは地域の独立系書店の復権が顕著になりつつある。昔からの町のラーメン屋さんが『町中華』として見直されているように、地元の読者に支えられる『町本屋』にとって希望の年にしよう」と乾杯の発声をした。
懇談の後、出席者全員に渡されたお年玉年賀はがきの当選番号発表に続き、「ニチザンカイ」にちなんで下1桁「2」と「3」にお年玉図書カードが贈られた。和やかな歓談の時を過ごし、矢幡秀治実行委員長の御礼のあいさつでお開きとなった。

「本屋大賞」候補10作品が決まる

2024年「本屋大賞」(同実行委員会主催)のノミネート作品が2月1日、発表された。
一次投票を昨年12月1日から1月8日まで行い、全国の530書店、書店員736人が投票。ノミネート10作品を決定した。二次投票は同日から2月29日まで受け付け、大賞作品を決定する。大賞発表は4月10日。
ノミネート作品は次の通り。
▽川上未映子『黄色い家』中央公論新社
▽小川哲『君が手にするはずだった黄金について』新潮社
▽津村記久子『水車小屋のネネ』毎日新聞出版
▽夏川草介『スピノザの診察室』水鈴社
▽塩田武士『存在のすべてを』朝日新聞出版
▽宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』新潮社
▽知念実希人『放課後ミステリクラブ1金魚の泳ぐプール事件』ライツ社
▽凪良ゆう『星を編む』講談社
▽青山美智子『リカバリー・カバヒコ』光文社
▽多崎礼『レーエンデ国物語』講談社

梓会出版文化賞に子どもの未来社/「子供の権利」巡る出版活動を評価

年間を通して優れた書籍を発行している中小出版社を顕彰する「第39回梓会出版文化賞」と「第20回出版梓会新聞社学芸文化賞」の贈呈式が1月18日、東京・千代田区の如水会館で開催された。この賞は専門書を主体とする中小出版社108社で構成する出版梓会が主催。今回は72社から応募があり、4社が受賞した。
梓会出版文化賞はウクライナやガザなど不穏なニュースが続く中で『戦争と平和子どもと読みたい絵本ガイド』が話題となった子どもの未来社(東京・千代田区)、同特別賞は印刷製本にこだわりオブジェとしての本の特質を追求する出版社として『詩画集目に見えぬ詩集』を手掛けたBook&Design(東京・台東区)が選ばれた。
出版梓会新聞社学芸文化賞はこれまであまり語られてこなかった近代史の側面を描く『羊と日本人』が評価された彩流社(東京・千代田区)、同特別賞は80年以上前の絵本『世界で最後の花』を村上春樹の翻訳で再び世に出したポプラ社(東京・千代田区)が受賞した。
子どもの未来社の奥川隆社長は「いつもギリギリのところで本を作っている。原価率は年々高くなり、少子化や書店の減少など出版を巡る状況は厳しくなるばかり。それでも本を出し続けられるのは子どもたちと、子どもに関わる人たちに本の素晴らしさを伝えたい、そして自分に自信を持ってほしい、元気になってほしい、夢を諦めないでほしいという思いがあるから。国連総会で子どもの権利条約が採択されて35年、日本が批准して30年になる。子どもを取り巻く環境はなかなか良くならないが、今年こそ子どもの権利が注目される流れを作りたい。心が折れそうになった時は今回の受賞を思い出し、自信を持って立ち上がり、前進していきたい」と感謝の言葉を述べた。
Book&Designの宮後優子代表は「手に取った時に美しいと思える本を作ること、読者が買って良かったと思える本を出版することを心掛けている。印刷・製本の素晴らしい技術を次世代につなげたい」、彩流社の竹内淳夫会長は「若い人がこの業界にいない。このまま沈没していくのではないかと危惧している。できるだけ若い人を巻き込んだ出版活動をしていけるよう努力する」、ポプラ社の千葉均社長は「当社は子どもと、むかし子どもだったすべての人が、世界に出会うための本をこれからも作り続けていく」と喜びを語った。
贈呈式の後に行われた懇親会であいさつした出版梓会の江草貞治理事長(有斐閣)は、2024年は再販制度や委託販売制度の上流にある出版社が、出版界全体のデザインをどうするか決断するタイミングにきているとの認識を示した。
また、同日開かれた定時総会で下中美都氏(平凡社)が新理事長に選ばれたことを報告した。

12月期販売額は8.7%減/書籍7.5%減、雑誌10.0%減/出版科学研究所調べ

出版科学研究所調べの12月期書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比8・7%減だった。内訳は、書籍が同7・5%減、雑誌が同10・0%減。雑誌の内訳は、月刊誌が同8・8%減、週刊誌が同17・9%減。
返品率は書籍が同0・1ポイント増の29・1%。雑誌が同2・5ポイント増の40・3%。雑誌の内訳は、月刊誌が同2・1ポイント増の38・5%、週刊誌が同5・1ポイント増の50・4%。
書店店頭の売れ行きは、書籍が約1%増。前年同月を上回るのは21年4月期以来。文芸は約8%増で3ヵ月連続のブラス。学参は約10%増、ビジネスは約4%増と好調だった。児童はほぼ前年並み、文庫は約1%減、新書は約15%減だった。11月刊行の『大ピンチずかん(2)』(小学館)は前作とともに売れ行きを伸ばし、2月出来分まで入れたシリーズ累計発行部数は147万部に達している。『続窓ぎわのトットちゃん』(講談社)はアニメ映画が12月8日に公開され、50万部を突破した。
雑誌は定期誌が約5%減、雑誌扱いコミックスが約15%減、ムックは家計簿の売上が好調で約1%増。

日教販「第73回春季展示大市会」/4年ぶりリアル開催で盛況/渡部社長「今年は大きなビジネスチャンス」/日書連・矢幡会長「紙を基本に」

日教販は1月11日、東京・新宿区のホテルグランドヒル市ヶ谷で、第73回春季展示大市会(後援=辞典協会、学習参考書協会、日書連)を開催した。リアル開催は4年振り。展示のほかに書店向け研修会やミニセミナーも行われ、出版社、書店など634人が出席した。
セレモニーでは渡部正嗣社長が登壇し、自社の2023年9月期の業績を報告。売上高は前期比4・3%増の280億2700万円、内訳は書籍部門が高校教材の伸長により増収、教科書部門も定価アップ等により増収、デジタル・配送部門もデジタル教材アプリの売上げ増により若干の増収だった。
経費面については、人件費の増加や電気代の高騰により、販売管理費および一般管理費は同1・5%増の24億6400万円となり、当期利益は同23・4%減の2憶2000万円と増収減益。利益剰余金は14億6800万円で、自己資本比率も25%を超えたことから、前期に引き続き当期も配当を実施するとした。
また、今年は小学校教科書改訂や新課程の大学入試開始など、大きなビジネスチャンスが期待できると述べ、自社の取り組みを説明した。主な項目は次の通り。書店店頭部門=出版社とのコラボ企画実施(高校教科書ガイド企画ではアニメーション動画の再生回数が4万8000回を超え、増売につながった)、入試の仕組み・勉強のポイント・お勧めの参考書を掲載した無料冊子の充実、日教販プロモチャンネルにおけるエンドユーザー向け動画拡充、受発注システム「採用WEB」の提供、物流部門=書店担当者の勤務体系に即した曜日・着日指定、新刊と既刊を合わせることで小口出荷の削減を図る、デジタル部門=出版社に対するデジタル教材の商品企画や販売支援業務。
なお、システム関連では、自社基幹システムの再構築プロジェクトを推進しており、昨年10月1日より新システムを順次稼働させているとの報告があった。
最後に「業務提携先である日本出版販売をはじめ書店、特約、出版社の協力を得て、役員・従業員一丸となって業務に邁進する」と決意を示した。
続いて日書連の矢幡秀治会長があいさつ。日教販は棚管理や仕入れなどのきめ細かい対応が売上げに結び付いているとの考えを示すとともに、デジタル化の普及について触れ「小学校教科書の改訂で申請された全点にQRコードが掲載されたと聞く。1人1台の学習端末が配備された結果、デジタル対応が加速されたのではないか。今後は日教販の売上げのなかでもデジタルの部分が増えていくと思うが、紙が基本なので、適正を検討しつつも大胆な対応をお願いしたい」と述べた。
辞典協会の鈴木一行理事長は、これまでは紙とデジタルという対比の中で、紙の辞典も使ってもらいたいという観点で活動してきた面があり、紙の有用性を研究している学者の協力の元、様々な研究を世の中に伝えることで辞典全体の普及を図ってきたと説明し、「紙とデジタルという対比だけでなく、辞典そのものを学習の場面でもっと有用に使ってもらいたいとの考え方をもとに、研究成果を知らせていきたい」とあいさつした。
学習参考書協会の志村直人理事長は「新過程の大学入試開始という大きな変化は、業界にとって販売のチャンス。日教販に業界をけん引してもらい、さらに増売につなげてまいりたい」と乾杯の発声を行った。
今年も福島日教販会の西猛会長から白河だるまが贈呈され、渡部社長と来賓で目入れを行い学参・辞典商戦の盛況を祈念した。

自社の取り組みをテーマごとに紹介/日販「新春オチャノバフォーラム」初開催

日本出版販売は1月9日、東京・千代田区の日販本社7階「オチャノバ」で「新春日販オチャノバフォーラム」を開催し、取引先を中心に約200社・520人が来場した。
同イベントは新年に際して取引先との一層の交流を目的に、自社の取り組みをブース形式で紹介するもので、今回が初開催となる。展示内容は次の通り。
①コンテンツとつくる、書店と人の接点=「新たな客層にリーチする売り場づくり」インバウンド向けの棚展開や「来店したお客様の客単価を上げる」人気コンテンツによる書店祭を提案、②新たな人と本の接点づくり=完全無人書店「ほんたす ためいけ」、書店併設型店舗「LAWSON マチの本屋さん」、入場料制書店「文喫」の紹介、③豊かさを届ける物流=今年10月に稼働予定の新拠点および新倉庫システム「SLIMS」、自動倉庫「ラピュタASRS」の情報公開、④アナログをデジタルに変える=クラウド型出版社システム「CONTEO」、学校図書館向け選書サイト「ToshoTosho」、出版社向け新プラットフォーム「BookEntry」、書店向け新発注プラットフォーム「NOCS 0」の紹介。
フリースペースでは、おはぎ専門店「ohagi3」のおはぎが振る舞われた。

能登半島地震の被災者に義援金/学研ホールディングス

学研ホールディングスは、令和6年能登半島地震の被災者に対する支援として、1月12日から同18日の期間、東京・品川区の学研本社ビルで社員ならびに関係者より義援金を募っていたが、このほど日本赤十字社を通じて31万8256円を寄付した。
学研グループでは募金活動と合わせて、子ども向け電子書籍サービス『学研マナビスタライブラリー』の無料公開などを行なっている。

連載「本屋のあとがき」~華文ミステリ、冒険小説に注目~/宇田川拓也(ときわ書房本店・文芸書・文庫担当)

なんだか面白くなりそうな風が吹き始めている。
かつて〝冒険小説〟と称される作品群が人気を博した時代があった。アリステア・マクリーン『女王陛下のユリシーズ号』、ジャック・ヒギンズ『鷲は舞い降りた』、船戸与一『山猫の夏』、志水辰夫『背いて故郷』といったタイトルを挙げれば、懐かしく感じる50代以上の方も多いだろう。近頃、こうした冒険小説に連なる海外作品がポツポツと刊行されており、2月末頃には名著である北上次郎『冒険小説論近代ヒーロー像一〇〇年の変遷』が創元推理文庫の一冊として復刊されるという。
もうひとつは、ここ10年ほど関心を寄せている華文ミステリ(中国語で書かれたミステリのこと)への注目度が上がりつつあることだ。
先日、これらふたつの流れをあわせたような大作、馬伯庸『両京十五日Ⅰ凶兆』が、早川書房より刊行された。
舞台は15世紀の中国、明の時代。南京で襲撃された皇太子は、北京にいる皇帝の命の危機を知る。タイムリミットは15日。皇太子は仲間とともに幾千里を駆け、帰還することができるのか――といった内容だ。まさに〝冒険小説〟ではないか。ハヤカワ・ポケット・ミステリ創刊70周年記念&通巻2000番特別作品として、欧米の傑作ではなく、華文作品が選ばれた意義は極めて大きい。
続編『両京十五日 Ⅱ天命』は、3月発売とのことである。冒険小説と華文ミステリの風が、さらに強く吹くことに期待せずにはいられない。