全国書店新聞
             

令和6年5月15日号

齋藤経産相、書店経営者と「車座ヒアリング」 書店支援へ意見交換/「キャッシュレス決済 手数料負担重い」「補助金申請 手続き簡略化を」

 経済産業省の「文化創造基盤としての書店振興プロジェクトチーム」(書店振興PT)は4月17日、東京・港区の大垣書店麻布台ヒルズ店で、齋藤健経済産業大臣と書店経営者らによる車座ヒアリングを行ない、減少が続く街の書店の振興策について意見交換した。出席者からは書店経営の厳しい状況を訴える声が相次ぎ、補助金申請の手続きの簡略化やキャッシュレス決済の手数料負担などで支援を求める意見が出された。齋藤大臣は「図書館、ウェブ、書店が共存する世界を目指したい」として、書店と問題意識を共有しながら支援策を検討していく考えを示した。
 車座ヒアリングには、金高堂書店(高知)の亥角政春社長、啓林堂書店(奈良)の林田幸一社長、久美堂(東京)の井之上健浩社長、大垣書店(京都)の大垣守弘会長、出版文化産業振興財団(JPIC)の近藤敏貴理事長、日書連の矢幡秀治会長が参加した。
 冒頭、齋藤大臣は書店振興PTに取り組むことになったことについて「本と出合う方法は図書館、ネット、書店の3種類ある。それぞれ持ち味を活かしながら共存するのがあるべき姿と考えているが、その中で書店だけがどんどん減っていくということでいいのだろうかという問題意識がある。経産大臣に着任して何かやれることがあるのではないかとPTを立ち上げた。皆さんから虚心坦懐に話を聞いて、何をすべきか考えていきたい」と説明。
 書店振興PTには様々なところから反響があったとして、「皆さん問題意識を共有していると強く感じた。本を愛する多くの人たち、国民の皆さんが盛り上げていくことが大事」と指摘。上川陽子外務大臣も書店振興PTの活動に強い関心を持っており、車座ヒアリングにも参加したかったが、外遊と重なったため参加できないことを残念がっていたと報告した。
 続いて、上川大臣から寄せられた「海外出張時には可能な限り現地の書店を訪問する。書店はその国の歴史や文化、人々の関心が凝縮しており、外交推進の手がかりを得る上で重要な拠点。日本においても、書店を日本文化の発信拠点、多文化が行き交う文化交流拠点として一層大切にしていきたい」とのメッセージが読み上げられた。
 その後、出席した書店経営者が各書店の取り組みや課題について発表した。
 金高堂書店の亥角社長は、地域における書店の役割として「文化全体の下支え」「教育支援」「地域の中で雇用創出」を挙げ、フェア実施や学校・公共図書館との連携など地域とのコラボレーションの取り組みを説明。「地域格差をなくすため、九州雑誌センターのように各エリアで返品現地処理化が進めばありがたい。そうした部分で知恵を拝借したい」と要望した。
 啓林堂書店の林田社長は、事業再構築補助金を活用して昨年開業した「書院SHOIN」について、書店に併設した時間課金制の空間で、書店の利用シーンを拡張する取り組みと説明。事業再構築補助金について「新たな領域の事業に対して勇気を持って投資を行うことができた」としたが、活用可能な書店が少ないことや手続きに時間と労力がかかりハードルが高いことなど、業界全体で活用するには課題があることも指摘。「シンプルでハードルの低い制度として運用してほしい。補助金だけでなく、既存ルールの見直しなど業界全体のアップデートも必要」と述べた。
 久美堂の井之上社長は、鶴川駅前図書館の指定管理を受託し、店頭で予約資料の受け取り、資料の返却を実施したところ、学参と児童書の売上が増加した事例を紹介。「指定管理ではほとんど利益がなく地域貢献と考えている。一方、資料の納品は別途入札で、地域によっては多くの課題がある」と指摘し、納品時の装備コストの負担や入札について改善が必要とした。
 大垣書店の大垣会長は、今後の書店業界に必要とされるのは現状への補填ではなく未来に向けての投資だとして、業界共通の決済アプリ「BOOK PAY」、書店創業支援、書店員のリスキリング、RFIDの普及促進といった取り組みを説明した。
 JPICの近藤理事長は、「今、全国の書店の在庫を一般顧客と図書館に開示して来客を促す施策や、無人書店を作る取り組みを進めている。こうしたインフラを整備することで経産省と一緒にお手伝いできれば」と話した。
 日書連の矢幡会長は「東日本大震災でもコロナ禍でも多くの人が書店に来た。図書館でも本は読めるが自分のものにはならない。ネットでは色々な本に出会うことができない。紙の本は脳科学者も言っているように頭に馴染み、記憶と知恵を作り上げていくために重要。その大切な紙の本を書店は売っている。自分たちの利益のためではなく、いま残っている書店は心からそう思っている。ただ、やはり経済的に厳しい現状があり、支援していただければ」と訴え、書店振興PTに期待を示した。
 最後に齋藤大臣は「問題意識を共有する機会になり、キックオフとして良かった。キャッシュレス、図書館、ネットとの関係など書店が抱える問題は色々ある。いま問題になっていることをリストアップし、政府が対応できること、業界団体が慣行を直すことで進められることなど、問題点を整理した上で対策を考えたい」と述べた。
 齋藤大臣はヒアリング終了後、記者団に対し「書店は日本の重要なコンテンツ産業の一翼を担っているので、経産省がしっかり見ていく。ただ、経産省だけでやれることは限られているので、他省庁とのコラボも必要になってくる。図書館、ウェブ、書店の3つが共存する世界を目指したい」と述べ、支援策を検討していく考えを示した。

春の叙勲/教科書供給協会から3名が黄綬褒章

 令和6年春の叙勲が4月29日付で発令となり、全国教科書供給協会から次の3名が黄綬褒章を受章した。
 ▽井之上賢一(久美堂 代表取締役会長、東京都町田市)
 ▽尾崎學(學海堂書店 代表取締役社長、北海道士別市)
 ▽阿部光郎(エビヤ 代表取締役、福井県勝山市)

書店議連総会/齋藤経産相「議連とも連携し前進を」/関係省庁が取り組み報告/日書連矢幡会長 複本問題で注文

 「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」(書店議連)は4月18日、東京・千代田区の衆議院第二議員会館で総会を開き、国会議員と書店、出版社、取次、業界団体の関係者が出席した。同議連が昨年4月に発表した第1次提言を受け、経済産業省、文部科学省、文化庁、公正取引委員会の関係省庁の担当者が取り組みの状況を報告した。
 塩谷立会長は「書店が各地域にあるかどうかが文化のバロメーター。知の拠点として親しまれている書店がなくなることは文化の停滞を招く。ただ、新しい形で各書店がいろいろな試みをしていることは楽しみという思いもあり、新しいアイデアを含めて知の拠点としての存在を高めてほしい」と述べた。
 経済産業大臣の齋藤健幹事長は「書店の減少にずっと危機感を持っていることから、経産省に大臣直轄の『文化創造基盤としての書店振興プロジェクトチーム』(書店振興PT)を作った。思った以上に反響があり、テレビや新聞でも取り上げられ、コンテンツ産業課にいろいろなところから問い合わせがある。世の中の本好きが書店がなくなることをこんなに心配しているのだと大変勇気づけられた。経産省はいろいろな政策を打ち出しているが、これほどPRできる政策は他にないというほど多くの反応がある。議連とも連携し、いい形で前進していきたい」と話した。
 続いて各省庁が報告を行った。
 経産省は書店振興PTについて報告した。同省は文化創造産業分野の重要性に鑑み、今夏、商務サービスグループに文化創造産業課(クリエイティブ産業課)を創設し、体制強化を図ることにしている。
 各地の書店は地域コミュニティに根差した街の文化拠点としての機能を果たしてきたが、その数は近年激減し、全国市町村のうち約26%が無書店となっている。その現状を把握し、支援施策を有効に活用している事例を広く業界に共有し、夏からの新体制での施策展開がより大きな効果をあげるよう取り組みたいと、同省は説明した。
 文科省は4月に公表した「書店・図書館等関係者における対話のまとめ」の内容を報告。複本の状況について「ベストセラー本の複本は平均1・46冊で、約6割の図書館の複本は『2冊未満』で過度とは言えない状況。平均すれば全体として図書館による新刊書籍市場の売上へのマイナスの影響は大きくないが、一部のベストセラーに限ればマイナスの影響が小さくないことを、複本に係る共通認識とした」と説明した。
 文化庁は「地域の書店は活字文化の担い手として重要な役割を果たしており、文化芸術の観点からも地域の書店を支える取り組みを推進する必要がある」として、書籍への関心を高める取り組みで「BOOK MEETS NEXT」への協力を行っていることなどを説明した。
 公取委は、書籍・出版関係者と公取委との対話の場を設置し、官公庁等の書籍の入札に係る値引きへの適切な対応(実態調査や業界の「雛形」に記載された適用除外を削除など)を図る必要があり、ネット書店の送料無料については実態調査を行ない必要な対応を検討するとして、各取り組みの対応状況を説明した。
 書店側からの報告で、日書連の矢幡秀治会長は「最近まで書店はなくなって当たり前で時代の流れと言われていたが、書店はなくしてはいけないものだと国民の声が変わってくれば、われわれも生き残っていける。自助努力は必要だが、支援も必要だ」と訴えた。
 また、文科省の複本問題に係る説明に言及し、「約6割の図書館の複本は2冊未満と言うが、では残りの4割はどうなのか。その4割で書店は苦しめられているのではないか。平均すればいいというものではない。もう少し深堀りしてほしい」と注文をつけた。
 出版文化産業振興財団(JPIC)の奥村景二副理事長は、書店の閉店理由について①不採算②テナントで入居しているショッピングセンター等の都合③後継者不在――を挙げ、「閉店を理由別に細分化し、どういう手が打てるかを議論し直し、提示したい」として協力を求めた。
 最後に塩谷会長は「さまざまな課題が明確になり、具体的に何をすればいいかが分かってきた。これだけでも大変な進歩だが、あとはいかに結果を出すかだ。知の拠点、文化の拠点としての書店がどの地域でも親しまれる日本を作っていきたい」と話した。

奈良組合/スタンプラリーなど読書推進企画 非組合員にも参加呼びかけ検討へ

 奈良県書店商業組合は4月10日、大和郡山市のディーズブックで第4回理事会を開いた。
 林田芳幸理事長は「書店経営はますます難しくなってきたが、何らかの方策があるはず。何としても生き残っていくために挑戦しよう」と呼びかけた。
 協議では、年末年始に県内の公立図書館とコラボして共同実施しているスタンプラリー企画と4~5月に実施しているサン・ジョルディの日キャンペーン企画を、非組合員にも参加を呼びかけていく方向で検討を進めることを決めた。
 令和6年度総会は8月8日に開催することを決めた。
 次回理事会は5月30日。
   (靏井忠義広報委員)

大阪組合/「帯コン」表彰式 11月9日に開催

 大阪府書店商業組合は4月13日、大阪市北区の組合会議室で定例理事会を開催した。
 庶務報告では、令和5年度総会を5月25日午後3時から組合会議室で開催することを決めた。重要議題の審議・報告では令和5年度総会議案書について審議し、承認された。
 読書推進委員会からは第20回「本の帯創作コンクール」のスケジュールの説明があった。表彰式は11月9日、大阪府立中央図書館ライティホールで開催する。
   (石尾義彦事務局長)

連載「春夏秋冬 本屋です」~俵万智さんと宮崎の絆~/岩切 承自(宮崎・岩切書店 代表取締役会長)

 牧水のふるさとなれば空港に置かれて嬉し「牧水の恋」 俵万智
 (宮崎日日新聞連載「海の青通信」より)
 宮崎空港に小ぶりな書店コーナーがあり、当店が管理品揃えしています。
 歌人俵万智さんは6年半ほど宮崎に在住し、現在はご両親をサポートするため仙台に転居されました。しかし若山牧水賞受賞者でもあり、「牧水・短歌甲子園」の審査員など何かと宮崎とのご縁が続いておられます。 俵さんが宮崎を往来され空港を利用される折、書店コーナーに立ち寄られ自著にサインしてくださいます。最初は『牧水の恋』(文藝春秋)でしたが、さすがに俵さんも逡巡され売れ残ったら私が買い取りますとまで言ってくださいました。その後、現在までその数約400冊にサインしていただきましたが、ほとんど完売です。わざわざサイン本を送って欲しいとの依頼もあります。
 ローカル空港にとって地元関係の書籍を揃えることは大切だと思っていますが、著名な著者が自ら進んでサインしてくださることはとても驚きでした。一冊一冊丁寧な墨字でサインされた本を、宮崎空港を利用されるお客様が手に取り購入していただく。それを読んで著者との身近な関係を紡いで下さり、宮崎の良さを改めて感じていただく。とても素敵な循環だと思っております。俵万智さんに感謝です。
 宮崎居住時の俵さんがどう過ごされたか興味のある方は『青の国、うたの国』(ハモニカブックス刊)をお読みください。

鼎談「図書館の現状と改革の課題」/図書館納入取り返した地元書店の事例報告/北海道幕別町 東京の専門業者依存から地域循環経済モデル構築へ 

 鼎談「図書館の現状と改革の課題―図書館職員の地位向上をめざして―」(主催=文字・活字文化推進機構、全国学校図書館協議会、学校図書館整備推進会議、後援=活字文化議員連盟、学校図書館議員連盟)が4月16日、衆議院第二議員会館で開催され、関係者150名が参加した。鼎談では、会計任用職員制度と指定管理者制度が図書館運営をゆがめ、無書店市町村の増大を後押ししつつある現状を取り上げ、民間活力の適切な運用と活字文化の再生について話し合った。地元書店から本を購入し、高額なMARCの購入を止めることで、地域循環型の経済モデルを作った北海道の図書館の事例も報告された。
 鼎談では太田剛氏(図書館と地域をむすぶ協議会代表、慶應義塾大学講師)、荒井宏明氏(北海道ブックシェアリング代表理事)、嶋田学氏(京都橘大学文学部歴史遺産学科教授)の3名が登壇した。
 2012年から本格的に図書館に関わるようになったという太田氏は、その最初の幕別町図書館(北海道)の事例に沿って話を進めた。
 当時、同館では①本は近隣の書店ではなく東京の専門業者に発注、②業者は地元納入組合の名義で本を納め、作業していない組合に手数料が支払われる、③図書館は業者が納める本をそのまま受け入れ、司書による選書は行わない、④限られた予算にも関わらず高額なMARCデータ(図書館蔵書用書誌情報)を購入するなど、「おかしいと思うことばかりだった」という。
 そのため、きちんと地元書店から本を購入する、高額なMARCデータの購入は止めるなどの改善を実施。装備作業は地元の福祉施設に委託して、小さな経済モデルを町の中で動かすようにして、これが図書館がより良い社会のために新しい仕組みを生み出して変化を引き起こす「ソーシャルイノベーション」の実践の場になったと指摘。「導入するシステムが決まると選書や納品まで決まってしまい、地元書店は入札にも参加できなかったが、新しい図書館づくりを進める中で、納入を取り返した地元書店はモチベーションがあがっている」と報告した。
 荒井氏は北海道の読書環境について報告した。
 北海道の学校司書の配置は小学校が24・8%、中学校が33・9%と全国平均を下回るが、特に高校に関しては全国平均が66・4%のところ6・2%(2021年文部科学省調べ)。雇用形態も小学校で常勤12人・非常勤246人、中学校で常勤3人・非常勤113人の割合で、特別支援・義務教育・中等教育に至っては学校総数117校に対し常勤1人・非常勤9人となっている(札幌市を除く。2024年道教育委員会調べ)。荒井氏は「肝心なのは『人』。専門員の待遇・処遇が重要」と訴えた。
 嶋田氏は図書館行政・施策の現状に関して、地方公務員数が減少する中で図書館職員数、司書・司書補数についても年を追うごとに非常勤・臨時、委託派遣が増えていると報告。一方、イギリスでは指定管理者制度の導入を見直す新たな動きもあることから、嶋田氏はこれからの図書館改革の方向性について「図書館という共通財産を『ケア』(配慮)を基調に高めていきたい」と提案。生きるための情報を提供する図書館は医療や介護などと同じエッセンシャルワークであるとの考えを示した。
 このあと三者で意見交換。荒井氏は「街の書店は20年選手。学校の先生よりも学校図書館を分かっている」と述べ、書店の減少に歯止めがかからない現状について「本は一義的には商品。書店が機能しなくなれば出版が文化、システムとして成り立たなくなる」と指摘。書店が無いことで地域で本を購入する文化がなくなりつつあるのは大きな問題と懸念を示した。また、図書館職員の待遇の問題について、嶋田氏は「地域の政策・課題に図書館がどうコミットするか考えたい」と述べた。
 鼎談終了後、会計年度任用職員制度や指定管理者制度の運用の効果と課題を検証し、その結果を図書館改革や職員の待遇改善に資することを求めるアピールを採択した。
 冒頭あいさつでは、学校図書館議員連盟の河村建夫顧問、活字文化議員連盟・学校図書館議員連盟の笠浩史事務局長、文字・活字文化推進機構の山口寿一理事長が登壇した。

BOOK MEETS NEXT/今秋は「TOKYO BOOK NIGHT」/神田・お茶の水で多彩なイベント計画/夜の東京盛り上げるプロデューサー募集

 「BOOK MEETS NEXT」(BMN)運営委員会は4月30日、東京・千代田区の出版クラブで2024年度の企画説明会を開催し、書店、出版社、取次のほかマスコミや一般企業など、リモートも含めて400名が参加した。
 このキャンペーンは、読書推進運動協議会、日本図書普及、出版文化産業振興財団(JPIC)などで構成する運営委員会が主催。JPICを事務局として、日書連、日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会が協力する出版業界あげての読書推進の取り組みで、今回で3年目。昨年に引き続き紀伊國屋書店の高井昌史会長が運営委員長、JPICの近藤敏貴理事長が実行委員長を務める。
 冒頭のあいさつで、近藤実行委員長は「BMNは業界内には浸透しているが、一般にはまだまだ認識されていない。2024年は早めに準備を進めており、SARTRAS(サートラス=授業目的公衆送信補償金等管理協会)からの助成金支給もすでに決定している」と説明。「今年は昨年以上に参加型の取り組みが多く、本当の意味で業界一丸にならないとできないチャレンジだ」と意気込みを示した。
 また、「書店を無くしてはならないという意見が強くなる一方で、なぜ書店だけを支援しなければならないのかとの声もある。これは裏を返せば一般の方々の多くが出版、書店に大きな関心を寄せていることの証し。このような時だからこそ、私たちはただ厳しい厳しいと下を向いているわけにはいかない。この機会に書店は楽しく、本は面白く、出版業界は元気だと伝えていこう」と述べ、キャンペーンへの積極的な参加を呼びかけた。
 企画概要はJPICの松木修一専務理事が説明した。
 今年の開催期間は10月26日から11月24日までの30日間。10月26日から始まる神保町ブックフェスティバル(東京)と同日にスタートし、10月30日の書店大商談会(東京)、11月6、7日の東京版権説明会(TOKYO RIGHTS MEETING)、11月12日のBOOK EXPO(大阪)、11月23、24日のK―BOOKフェスティバル(東京・神保町)と連携して様々なイベントを展開する。
 期間中は「TOKYO BOOK NIGHT」と銘打ち、神保町を中心とした神田・お茶の水エリアのいろいろな場所でさまざまなイベントを実施する。
 具体的な企画例として、書店店頭での「夜の本屋さん探検」「夜の書店連続講座」を挙げ、書店のほかホール、大学図書館、バー、レストラン、スポーツショップ、楽器店、レコードショップなどでも実施を予定している。
 この企画を実施するにあたり、コンテンツの提供やプロデュースが行える「TOKYO BOOK NIGHT プロデューサー」を出版社、書店、企業、団体から募集する。「詳細な企画は打ち合わせをしながら詰める。まずはやりたいという意思表示と簡単な企画内容、概算費用を登録してほしい」と松木氏は呼びかける。申込は専用フォーム(https://forms.office.com/r/xreg2QcixA)から。締切は5月31日。
 また、地域のチカラを結集した「地域イベント」を募集する。単独書店や単独チェーンではなく、地域横断組織で実行委員会を組成する必要があり、可能な限り自治体や大学、地元新聞などとの連携を検討するよう求めている。申込みは専用フォーム(https://forms.office.com/r/0Drr9Lm5Nf)から。締切は5月31日。
 昨年同様、取次横断の展開が可能な特別企画も募集する。著者サイン会と連携した飾り付けコンクールなどを提案してほしいとしている。
 地域企業とのコラボによる企業版「ブックカバー大賞」、店頭イベント助成金獲得企画などの実施も検討している。
 JPICの金田徴常務理事は、前年度実施報告を行い、東京・新宿区の紀伊國屋ホールで開催したオープニングイベントやメインイベントの「KYOTO BOOK SUMMIT」、ブックカバー大賞、店頭飾り付けコンクールなどの関連イベントが盛況裏に終了したことを説明した。

北海道組合理事会/総会議案を説明

 北海道書店商業組合(志賀健一理事長)は4月23日、札幌市北区のホテルサンルート札幌で定例理事会を開催した。6月18日開催の第48回通常総会の事業報告、事業計画案、収支決算報告、収支予算案について事務局が説明し、審議した。 (事務局・髙橋牧子)

書店組合総会スケジュール

 ◆北海道書店商業組合「第48回通常総会」
 6月18日(火)午後4時半、札幌市北区・ホテルサンルート札幌で開催。

出版科学研究所調べ/3月期販売額は8・6%減/書店店頭は好調、書籍・ムックが前年超え

 出版科学研究所調べの3月期書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比8・6%減だった。内訳は、書籍が同7・7%減、雑誌が同10・4%減。雑誌の内訳は、月刊誌が同9・4%減、週刊誌が同15・9%減。書籍は23年末から店頭売り上げの回復基調が続いているが、取次送返品から算出する推定販売金額はなかなか上向かず、乖離が続いている。
 返品率は書籍が同0・7ポイント減の24・9%。雑誌が同0・4ポイント増の40・0%。雑誌の内訳は、月刊誌が同0・1ポイント増の38・8%、週刊誌が同2・5ポイント増の46・7%で、書籍は4ヵ月ぶりの改善。
 書店店頭の売れ行きは、書籍が約7%増。文芸は約5%増、文庫は約6%増、新書は約10%増。売れ行き良好書(単行本総合)では、『変な家(2)』(飛鳥新社)が1位、『変な家』(同)が2位、『変な絵』(双葉社)が3位と雨穴の作品が上位を独占した。雑誌は定期誌が約6%減、雑誌扱いコミックスが約13%減、ムックは約2%増で4ヵ月連続のプラスとなっている。

ゴールデンウィーク書店売上動向/トーハン0・7%増、日販0・8%増/「文芸」「学参・辞典」が好調

 トーハン、日本出版販売(日販)はゴールデンウィーク(4月27日~5月6日)の書店売上動向を発表した。トーハンは前年比0・7%増、日販は同0・8%増と、両社とも微増だった。
 【トーハン】
 調査対象書店は1568店。立地業態別では駅ビル内(3・5%増)、SC内(2・7%増)が好調だった。商品種別では、書籍は同2・5%増、雑誌は同8・9%減、コミックは同4・5%増、マルチメディアは同16・3%増。購入客数は同21・1%増、客単価は同5・1%増だった。
 書籍は、文芸書が同2・6%増。本屋大賞受賞作の宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』と続編『成瀬は信じた道をいく』(新潮社)が売れ行きを伸ばした。文庫は同2・1%増。東野圭吾『白鳥とコウモリ 上・下』(幻冬舎)、映画公開中の雨穴『変な家 文庫版』(飛鳥新社)が上位となった。学参・辞典は、24年4月の小学校教科書改訂に伴い教科書準拠版が好調で、同7・9%増となった。
 雑誌は、定期雑誌が同10・1%減、ムックが同6・1%減。ムックはNHKテキスト「3か月でマスターする世界史」などが上位に入った。
 コミックは「ワールドトリガー27」(集英社)、「葬送のフリーレン13」(小学館)、「呪術廻戦26」(集英社)など人気シリーズ最新刊が売れ行きを伸ばした。
 【日 販】
 調査対象店は1249店。雑誌は同7・9%減、書籍は同2・6%増、コミックは同3・4%増、開発品は同24・1%増だった。
 苦戦した雑誌の中で、ムックは同5・5%減と比較的健闘した。「3か月でマスターする世界史」シリーズなどの人気作品が売上を牽引した。
 書籍は実用、専門を除く8ジャンルで前年を上回った。文芸は『成瀬は天下を取りにいく』や『変な家2』が好調だった。
 コミックは、雑誌コミックでは少年が同19・5%増と好調。「ワールドトリガー27」「葬送のフリーレン13」「呪術廻戦26」などの人気作の新刊が上位にランクインした。

上野の森親子ブックフェスタ/昨年上回る2万8500人が来場

 「上野の森親子ブックフェスタ2024」(主催=子どもの読書推進会議、日本児童図書出版協会、出版文化産業振興財団、後援=国立国会図書館、経済産業省、文部科学省、こども家庭庁、日書連など)が、5月4、5日、東京・台東区の上野恩賜公園および周辺施設で開催された。今年も出版業界横断で展開する読書推進活動「BOOK MEETS NEXT」の一環として実施した。
 晴天に恵まれた会場は、2日間で延べ約2万8500人(昨年2万6300人)の来場者で賑わった。出版社など65社が出展し、絵本・児童書を中心に約4万2700冊が展示された。2日間の売上は約3300万円に上り、前年比4・8%増となった。
 会場での精算は昨年に引き続き完全キャッシュレス決済、分散レジ方式を導入。利用可能なクレジットカードやQRコード決済を拡大し、会計待ち時間の改善が図られた。
 今年は2年ぶりにイベントテントも復活し、絵本のキャラクターやおはなし会なども開催。親子で参加して楽しむ姿が見られた。また、各出展者のブースには連日多くの作家が訪れ、サイン会やおはなし会などのイベントが開催された。
 5日には、周辺施設の国際子ども図書館で講演会「生成AI『チャットGPT』と学校教育・図書館の未来を考える」を開催し、133名が参加。東大名誉教授の佐藤学氏が、生成AIのあり方、紙の本との共存をどのように果たしていくかなどについて話した。

子どもの読書活動推進フォーラム/優れた読書活動行う学校など表彰

 子どもの読書活動について関心と理解を深めるとともに、子どもが積極的に読書活動を行う意欲を高めることを目的に、「子どもの読書活動推進フォーラム」(主催=文部科学省、国立青少年教育振興機構)が、「子ども読書の日」の4月23日、東京・渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された。
 フォーラムでは「子どもの読書活動優秀実践校・園・図書館・団体(個人)文部科学大臣表彰」として、子どもの読書活動推進に資するため優れた実践を行っている学校などを表彰している。今回は優秀実践校・園129校・40園、優秀実践図書館44館、優秀実践団体(個人)46団体・個人4名が表彰された。
 優秀実践校などを代表して、飯舘村立までいの里のこども園(福島)の塙啓世氏、新宮町立新宮東小学校(福岡)の佐土嶋玲子氏、天草市立中央図書館(熊本)の吉田悦子氏、おはなし円グループ(石川)の三嶋幸子氏が、「子どもの読書活動を推進するためには」をテーマに事例発表と対談を行った。
 また、全20作品の国内累計発行部数が120万部を超え、「喜多川ワールド」と呼ばれる独特の世界観を持つ作家・喜多川泰氏の特別講演「読書のススメ」も行われた。
 式典では、主催者を代表して安江伸夫・文部科学大臣政務官があいさつし、子どもの未来を考える議員連盟の河村建夫名誉会長、赤池誠章幹事(参議院議員)、岡本章子事務局長(衆議院議員)が祝辞を述べた。
 安江氏は、昨年閣議決定した第5次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」に基づき、①不読率の低減②多様な子どもたちの読書機会の確保③デジタル社会に対応した読書環境の整備④子どもの視点に立った読書活動の推進――に努めると述べた。
 河村氏は「子どもがスマホだけに頼るのは脳の発達に良くないと学者も言っている。文字・活字文化振興法にある『言語力』の基礎を作ることができるのは子ども時代。子どもにしっかりと本を読ませるのはとても大事なこと。全国でどんどん書店が減っているなど心配事はあるが、そういうことを阻止できるよう、全国津々浦々で読書活動が活発になるよう力になっていただきたい」と語った。

連載「本屋のあとがき」~「楽園」の隣りで~/宇田川 拓也(ときわ書房本店 文芸書・文庫担当)

 5月24日から全国ロードショーとなる映画『関心領域』を、ひと足先に試写で鑑賞した。
 カンヌ国際映画祭グランプリに続き、3月に発表されたアカデミー賞では作品賞をはじめ5部門にノミネートされ、国際長編映画賞と音響賞を受賞した話題作である。
 アウシュビッツ強制収容所を扱った作品だが、本作のユニークな点は、収容所の内部を直接的に映すのではなく、壁一枚隔てて隣に住む、収容所所長のルドルフ・ヘス一家の裕福な暮らしぶりにスポットを当てているところにある。そこだけ切り取ればホームドラマのような日常だが、焼却炉の轟音、怒号、悲鳴、銃声が昼夜を問わず壁を越えて響き続け、青空には煙突から吐き出される大量の煙が立ち昇る。言うまでもなく、無数の死体を焼いて出た煙である。
 あえて直接映さないからこそ、耳が、目が、その非人道的な行ないを感受し、言い知れぬ怖さがじわじわと体に沁み込んでくる。音響賞を受賞した理由がよくわかった。
 そして本作でもっとも怪物的に思えたのは、ヘスの妻だ。自身が豊かに暮らせるなら、数え切れないほどの人命がすぐ隣で奪われても一向に構わない。まともな神経なら正気ではいられないような異常な環境下でも、彼女にとってこの家は代えがたい楽園なのだ。
 ちなみに、映画公開とほぼ同時期に早川書房から刊行されるマーティン・エイミスによる原作小説とは、かなり描かれ方が異なっているらしい。大いに気になっている。